Read Article

広告

アルツハイマー型認知症を患った校長先生が妻に暴力

広告


私がデイサービス相談員をしていたときの体験談です。
夫婦二人暮らしで、夫がアルツハイマーの診断を受け、ずっと自宅で介護してきたが、
「もう限界なので助けてほしい」
「診断を受けてから4年間のうちに症状が進み、手を付けられなくなってきて、私独力での介護がもう限界に達している」
「せめて日中デイサービスに出てくれれば・・・」
という相談で、当施設を利用したいとの内容でした。
実際に訪問してみると、とても立派な一軒家で、近所では「校長先生のおうち」と有名だったようです。
実は、その利用者様は長年校長先生を歴任してこられ、厳しい中にも優しさを持った素晴らしい先生だったとのことでした。
本人の症状としては、認知症状のみで要介護4の認定を受けている程、かなりの重度な方でした。
歩行能力には何の問題もないのですが、失行・失認・失見当・言語理解能力の低下が著しく、コミュニケーションがかなり困難な状態でした(参考記事「認知症の中でも一番多いアルツハイマー型認知症の症状は?」)。
その状態のため、介護者の意思が伝わらず、自己防衛のために暴力を振るう形になってしまっていました。
例えば、お風呂に行こうと声をかけてお風呂に行っても服を脱がなければならない意味が分からず大声を上げたり、介護者の手を叩いたり、痣(あざ)になるほど強い握力で握りつけたりといった自己防衛行動です。
正直なところ「これはかなり大変だ」「今まで奥様はよく一人で介護してきたなぁ・・・」という感想を持ちました。

デイサービスでの課題

デイサービスを利用してみて明らかになった課題は、まず送迎車に乗ってもらえないことでした。
そのため、奥様からの協力を仰ぎ、「家事が済んだら自分もいくから」と宥めて(なだめて)もらいながら一緒に送迎車両に乗車し、出発前にサッと身を引いてもらうということを行いました。
これにより、送迎車乗車の流れは安定して行うことができました。

次に、当施設の構造上の問題に当たりました。
ユニバーサルデザイン設計のため、敷居や段差が全くないことにより、本人が屋内と屋外の境目を区別することができず、靴や帽子、上着を脱いでもらえないということが起こりました。
典型的な日本家屋である自宅では起きない問題でした。
職員皆で対策を検討した結果、前日に奥様から利用日の服装を連絡もらい、送迎添乗の職員が同様の服装をし、施設に着いたら一緒に脱ぐということを行いました。
これによって、100%ではありませんでしたが、高確率で「これから屋内に入るんだ」ということを理解してもらうことができるようになりました。

その後浮上した最大の課題は、プライドがとても高い方でしたので、ほかの方から間違い行動を指摘されると怒り出し、手を付けられなくなってしまう点でした。
例えば「部屋の中なのにどうして靴を脱がないのか、コートや帽子を脱がないのか」と何度も周りの利用者様から言われて怒り出してしまうものです。
本人は見当識がないので、何故靴や帽子、コートを脱がなければいけないのか理解できないのです。
そのため、他利用者様には、直接本人に言わずに職員に言ってくださいということを徹底して行いました。
どうしても本人に文句を言いたくなる方への対策としては、事前に間に入ったり、その都度他の利用者に説明して対応しておりました。
例えば職員が、「本人を納得させる説明が出来ないために靴等を脱げないでいる」というふうに説明していました。
つまり、「本人が悪いのではなく、介護の仕方の問題です」という自分たちが悪者になるスタンスで説明するようにしていました。

また、職員も空間把握に留意し、他の職員が今どこで何をしていて、コントロールできている領域はどの部分なのかを意識して行動し、お互いカバーし合うと言うことを徹底し行動することにしました。
つまり、施設内に複数いる職員が、お互いがどこで何をしていて、今自分が見ている利用者様は誰で、死角になっているところはないか…という把握です。
これがしっかり行われていれば、利用者様同士のトラブルに発展する前に職員が確実に間に入って防ぐことが出来ると考えたのです。
それまでは、職員同士が「あの人のことは〇〇さんが見ていた筈だ」というふうに誤解や思い込みにより死角が作られていた状況でした。

こういった取り組みにより、多少のトラブルはありましたが、この方が特別養護老人ホームに入居するまでの約2年間、安心してご利用いただくことができました。
私にとっても、認知症状のみで要介護4というかなりのレアケースでしたので、大変悩みながらも勉強になったケースでした。

URL :
TRACKBACK URL :

LEAVE A REPLY

*
*
* (公開されません)

Return Top