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亡き妻を探すために徘徊しているアルツハイマー型認知症の男性

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在宅介護、施設介護に関わらず、認知症高齢者の徘徊が大きな課題となっていることが少なくありません。
平成28年6月に行われた警視庁の発表によりますと、認知症または認知症が疑われる人の年間の行方不明者数が3年連続で1万人を超えている状況とのことです。
認知症高齢者は見当識障害のため、夜間や日中の区別がついていない方も少なくないので、夜介護者は24時間気を張っていなければいけないので精神的にも疲弊します。

そこで少しでも参考になればと思い、私がデイケア施設でお世話した、徘徊が多い男性のお話をします。
デイケアで出会ったSさんは80代の男性で、アルツハイマー型認知症です。
普段は家族からの介護によって在宅生活をしていましたが、週に2回、デイケアに通っていました。

Sさんの妻は死去しており、認知症を発症して以来、娘夫婦とその子供たちと同居をしています。
自立歩行が可能で、手伝いなども率先して行っています。
妻が死去してから認知症が発症するまでの十数年間は一人暮らしをしていたため、家事などは得意です。
そのため、家族が見てない時に料理をしないようにお願いしていても、ガスコンロに火をつけてしまって忘れてしまうようなことが多々あり、家族の悩みの種でした。

しかし、Sさんは趣味で知り合った友人たちが日中訪ねてきてくれて会話を楽しんだり、買い物や病院への付き添いをしてくれたり、色々助かることが多いそうです。

Sさんはデイケア内では他利用者と積極的に関わることが少なく、一人で散歩をしたりするのが好きでした。
中庭に出て妻を探していることがありましたが、その際は隣で一緒に歩いて思い出話や気持ちを聞くように心がけました。
妻の死を伝えても忘れてしまっている場合、その度に深い悲しみを感じることが想像できたので、Sさんの話を否定せずに相槌を打ちながら聞くことにしていました。

Sさんはデイケアの作業中などにふらりと中庭や外に出て行ってしまうため、周りから見れば徘徊と思うのでしょうが、Sさんにとっては歩き回っていても徘徊ではなく、「妻を探す」という目的のある散歩でした。

このように徘徊には理由があることが多いのではないかと介護をしながら、いつも感じています。
会いたい人がいたり、仕事を辞めてしまっていても通勤しようとしていたり、買い物に行こうとしていたりと様々な理由や目的があるのだと思います。

Sさんへの徘徊対策

私はSさんに対して、徘徊に付き添って無理に室内で作業をするように促すことはしませんでした。
しかし1時間以上、ずっと亡き妻を探していることもありました。
こういった場合、本人が満足するまで付き添っているのは良くないことではないかと後々になって考えさせられました。

その理由として、妻を探すという不安な感情ばかりにSさんの意識を向けてしまっているため、精神的に嫌な感情を感じさせることになってしまうからです。
Sさんは他利用者と積極的にコミュニケーションを図っていなくても、決して嫌がっていたわけではなく楽しいと感じていました。
なので、不安な気持ちに向き合わせてしまうより、楽しいと感じることにも目を向けてもらうように声掛けをしたり、他利用者の輪の中に入れるように促したりとした方が良いのではないかと考えました。
そこで、Sさんは料理が好きだと聞いていたので、一緒にカレーを作ったり、ハンバーグを作ったり、意識を趣味の方に向いてもらうようにしました。
他のデイケアの利用者も料理に参加するようになったおかげで、Sさんとも話すようになり、コミュニケーションが増えました。
そうしているうちに、デイケアにくることが生きがいになり、中庭や外にふらりと出て行ってしまうことが少なくなりました。

在宅介護、施設介護に関わらず、認知症高齢者の徘徊に淡々と付き添うというのは時間的にも非常に難しいことであると思います。
しかし無理に徘徊を止めるのではなく、目的や理由を理解し、他のことにも目を向けられるように促すことが重要だと思います。

[参考記事]
「[実例]老人ホーム内での徘徊に対する介護職員の対応が素晴らしい」

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