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せん妄を認知症と誤診する医師が多い

 

 今回の記事ではせん妄と認知症の違いについて説明します。医師の中にもこの区別がつかない人がいて誤診が多く見られます。

 せん妄とは「一時的に認知症と似た症状が現れること」です。
 症状としては
①何かに集中することが出来なくなり、気が逸れてしまう。
 例えば集中力がないために、相手の話を聞いて、言葉を返すことが出来なくなる。つまり、まともな会話が成立しない。

②記憶障害、見当識障害、言語障害、失行、心理症状、知覚障害などの症状がある。
 これらの症状は「認知症の中でも一番多いアルツハイマー型認知症の症状は?」で説明しましたが、一部抜粋します。

①学習・記憶力の低下
学習・記憶力の低下は
〇何度も同じことを繰り返したり、尋ねたりします。
〇薬を飲んだことや食事をしたことを忘れる
などの症状です。

②見当識障害
見当識障害は「時刻や年月日」「今自分がいる場所」「一緒に話したり、食事をしている相手」など今現在の状況が分からなくなることです。
「時刻や年月日」に関しては時刻→日付→年→月という順番に分からなくなります。

③失語
失語は今までに使っていた言葉が出にくくなることにより、人と会話ができなくなったり、相手が話している内容を理解できなくなります。

④失認
人は視覚、聴覚、嗅覚、触覚、味覚といった五感を通して外界と関わっています。
しかし、失認の障害を持っている人は五感のいずれかが脳の損傷(もしくは変性)により損なわれているため、対象を認知できません。
ですので、自分の子供を妻だと思ったり、電話の音の意味が分からなくなったり、いつも歩いていた道なのに迷ったりします。

⑤失行
失行は身体的に問題はないのに目的に合った行動ができない事です。
例えば洗濯機の使い方、服を着る方法、歯の磨き方などこれまで出来ていた行動が難しくなります。

⑥実行機能障害
実行機能障害は計画を立てながら手順を踏み、目的を達成する事が出来なくなります。
例えば料理をする場合には「野菜を切って、次にガスを付けて」など手順を決めないと出来ませんが、この一連の動作が難しくなります。

⑦心理症状
心理症状は
「不貞妄想、被害妄想、嫉妬妄想といった妄想」
「悲しさ、虚しさ、寂しさなどによる不安」
「状況を理解できない事による衝動コントロールの障害(怒ったり暴力を振るう)」
などがあります。
例えば配偶者が浮気してると思ったり、寂しさの余り家族に付いて回るなどの行動が見られます。

⑧知覚障害
知覚障害になると幻聴、幻視、幻触、体感幻覚などが起こり、死んだ人が見えたり、死んだ人の声が聞こえたり、虫が体を這っているように感じたりします。

⑨睡眠障害
睡眠障害は昼夜逆転し、夜間に目が覚めたり、日中に眠くなって寝るようになります。
以上アルツハイマー型認知症の9つの症状を紹介しましたが、最初にお伝えしたように認知症ではなく脳炎やパーキンソン病などの病気の可能性もありますので、専門医に診断してもらいましょう。

 このようにせん妄と認知症は似ていますが、以下の③や④のように違う面もあります。
③先ほど説明した①と②の症状が「短いスパン」で起きる。時間単位(例えば数時間の間に)、日単位、週単位という短い期間に症状が発生します。それに対して認知症は何年という長期間で進行していきます。

④せん妄にはこの後に説明する原因(病気や薬剤)があることが多いので、その阻害要因がなくなれば症状は無くなります。それに対して認知症は今の医学では治せないので、症状がなくなることはありません。

 では、なぜせん妄が起きるのでしょうか。せん妄の原因は大きく分けて2つあります。

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①病気によるせん妄

 病気はせん妄の原因になりますが、特に脳の病気になった時に、せん妄になりやすい。

〇脳腫瘍、脳梗塞などの脳の病気
〇喘息の激しい発作
〇糖尿病
〇肝不全
〇精神疾患
〇脳炎などの感染症
など

②薬によるせん妄

 薬を飲むこともせん妄の原因になります。薬によるせん妄は医師でも知識がないケースが多く、認知症と誤診する可能性は決して低くありません。特に注意していただきたいのは以下の薬です。

〇ファモチジン(成分名)
胃腸の薬として「ガスター10」などの商品名で売られています。

〇オセルタミビル(成分名)
インフルエンザの薬として「タミフル」の商品名で売られています。

〇抗ヒスタミン薬
アレルギー性鼻炎、花粉症の薬として「コンタック」などの商品名で売られています。

〇エフェドリン(成分名)
咳止めの薬として「ルルアタック」などの商品名で売られています。

〇ペニシリンやクラリスロマイシンなどの抗生物質
ペニシリンは世界で一番最初に作られた抗生物質で、感染症の予防に使われています。
クラリスロマイシンはピロリ菌の除去に使われています。

〇ロイコトリエン受容体拮抗剤
喘息やアレルギーの治療薬として「オノン」などの商品名で売られています。

 以上、病気によるせん妄と薬によるせん妄を説明しましたが、最後に大事なことを話します。

 先ほども書きましたが、何かの病気の治療のために薬を飲んでいて、それによりせん妄になっている場合、医師はそれを認知症と誤診する可能性があります。その時、認知症薬が処方されると、元の病気が悪化する可能性がありますので、取り返しのつかないことになりかねません。ですので、医師に今どんな薬を飲んでいるのか、そしてせん妄の可能性はないかを伝えてください。それでも、(家族の誰かが)せん妄なのに認知症と誤診されているのではないかと不安を感じる人はセカンドオピニオンで他の病院を受診させるのも一つの手です。

[補足]
 病気や薬の他にはアルコールの摂り過ぎもせん妄の原因になります。アルコールの摂りすぎは記憶力に関わりがある海馬の働きを弱くするので、一時的に記憶障害が発生する場合があります。

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