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認知症の家族への虐待(食事の準備がないなど)で介入した事例

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虐待とは…
厚生労働省の「高齢者虐待防止の基本」に以下のように書かれています。

ⅰ 身体的虐待:高齢者の身体に外傷が生じ、又は生じるおそれのある暴力を加えること。

ⅱ 介護・世話の放棄・放任:高齢者を衰弱させるような著しい減食、長時間の放置、養護者 以外の同居人による虐待行為の放置など、養護を著しく怠ること。

今回は、『養護を著しく怠る』に当たりそうなAさんのケースのお話をします。
Aさんはこんな方です。
Aさん(76歳女性)は、脳梗塞の後遺症で右片麻痺があります。
その後、脳血管型認知症も合併されておられます。
ADL(日常生活動作)は低いですが、健側(Aさんの場合は麻痺がない左側)を上手に使って室内は座位や寝そべりながら移動されています。
排泄はオムツですが、自力では変えられないので、皮膚がかぶれている状態です。
食事は健側で自力摂取されようと努力されますが、ほとんどをこぼしてしまいます。
ですので、体型は痩せこけています。
意思の疎通はやや困難で言葉にならないことが多いですが、ご本人からの喜怒哀楽の感情の表出はよくあります。

叫び声で近所の方が心配し通報

近所の方から「昼夜問わず、Aさんの叫び声が聞こえる。ドアをたたく音がする。」
との連絡が入り、私たちヘルパーが介入することになりました。
Aさんは長男と二人暮らしです。
長男は仕事が忙しく、朝も早く夜中まで帰ってこられません。
泊りで、帰宅されないこともあります。
なので、Aさんは独居のような状態でした。
感情の表出も激しく、受診時は医者や看護師さんの受け入れが難しく、診察もままならない状態でした。
このような状態ですので精神科入院を勧められていたようですが、金銭的にも厳しくどうすればよいのか考える暇もなかったようで、長男が一人で介護している状態です。

介護保険利用開始

デイサービスの利用とデイサービスのない日はホームヘルパーが1日2回入るようになりました。
ほぼ毎日、他者が介入できるようになりました。
デイサービスでは食事や入浴もできるようになり、レクリエーションも楽しんでおられたようです。

ただ、これだけでは十分な食事と排泄介助は確保できませんでした。
施設入所のお金も厳しく、在宅でなんとかやっていくことを希望されているので、長男の協力は外せません。
こういう経緯で介護サービスがスタートしたのですが、ヘルパーが入っても食材はほとんどなく、排泄ケアに必要なおむつなどの物品もない日が増えてきました。
その都度、連絡し準備の約束をするのですが、なかなか準備してくれません。
その結果、パンのみ、バナナのみ、冷凍のおかずのみなど、食事量も内容もとても貧相な物になっていました。

痣も発見。これは虐待か

介護保険の利用を開始してもAさんの状態は悪く、いたるところに痣(あざ)やかさぶたがありました。
よく動くのでご自身でぶつけている可能性もあり、虐待とは言いきることができません。
しかし、毎回のように、
「昼のご飯の準備がないけど、朝は食べているのだろうか…」

「晩の訪問時には食材を準備されているのだろうか…」
「パッドもおむつカバーもボトボトで衣類がしぼれるほど濡れているが、いつから排泄交換していないのだろうか…」
など、不審に思うことが続きます。
Aさんに傷の痛みや出血のことを尋ねると「痛い」「血やね」と話されますが、なぜそうなったかの答えは返ってきません。
食事もいつ食べたのかも分かりません。
関係スタッフは悩みました。
まずは、虐待かどうかを考える前に、Aさんの生命維持のために必要な最低限度の事が行え、家族の介護負担を軽減させるために、何ができるかを考えることにしました。

その後の対応

話し合いの場を持ち、長男の困っていることを聞く事にしました。
長男もご自身の事で忙しく、Aさんの事にまで気が回らなくなっていたようです。
「暴言を吐かれるとイライラしてしまう。」
「食べても食べなくても本人は話さないから分からない。1回くらいは食べている気がする」
「誰かが来たら何とかしてくれるだろう…」
など、Aさんへの関心が少なく、食事や服薬やおむつ交換をする頻度がだんだんと少なくなっていったとのことでした。
そこで長男には
●現状では訪問しても、Aさんの食事も排泄介助も物品がないため、何もできないまま退室するしかなくなってしまうこと
介護保険ではヘルパーはケアプラン以外の仕事をしてはいけないこと
●買い物を追加すると金銭的な負担が大きくなること
などを伝え、さらに長男にやって欲しいことを話し合いました。
長男にやって欲しいこととして伝えたことは
●最低でも食事や保清を確保できるように、必ず物品の準備を行なうこと。
●困ったときは遠慮せずに早めに電話、メール、ファックスなどで連絡をすること。
長男は後ろめたさから電話では話したがらないので、連絡手段は何でも良いとお伝えしました。
1時間くらいの話し合いでしたが、家族のやることが明確になり、Aさんの状態も落ち着いてきました。
食事と排泄介助が可能になり、痩せこけていた体も少しふっくらされ、臀部のかぶれや傷もよくなってきました。

[参考記事]
認知症の母に虐待してしまうのを避けるため老人ホームを決断

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