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独居で在宅生活を送る認知症高齢者と別居の家族

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Sさん(78歳、女性)は、脳血管性認知症です。
10年前に夫を亡くし、以降独居を続けています。
娘さんが二人おりますが、どちらも20年程前に嫁いでいます。
長女は県外へ、次女は県内に嫁いでいますが、車で1時間以上かかるため、Sさんの住む実家へ来られるのは1~2か月に1度くらいです。
Sさんは数年前に脳梗塞を患いましたが、ごく軽いものでした。
後遺症もほとんど残らず、独居で暮らすにも問題ないだろう…と、別居の娘さん二人は理解し、何より本人が一人で暮らすのを望み、独居を続ける事になりました。

長女、次女とも嫁ぎ先は夫の両親も同居で、Sさんは自分が不自由になろうとも、「娘の迷惑になるわけにはいかない」とずっと思っていたのです。

ご近所トラブルが続く

Sさんは定年まで看護師として働き、性格は明るく社交的でした。
脳梗塞を患った後も、物忘れが目立つ程度でした。
明るく社交的な性格は変わらず、近所の友人宅へ出向き、お茶を飲みながら談話をしたり、自宅へ友人を招いたりと、交流をもっていました。
そんな生活を続ける中で、周囲から「Sさんがおかしい」との声が聞かれるようになりました。
Sさん宅へ、友人が訪れても、室内と外で目が合っているにもかかわらず、知らないふりをし、玄関の鍵を開けようとしない。
その後、何事もなかったかのようにSさんは友人宅を訪れ、その時の事を覚えていないのです。
さらに近所の友人に対して、「私のカバン持っていったでしょう!」「うちのタンスから服を持っていったようだけど、早く返してくれ」など…突然、被害妄想と暴言を口にするようになりました。
それでも次に顔を合わせた時には、Sさんは何事もなかったかのように、普通に会話をするので、周囲からは不信感のようなものが募り、だんだんSさんとの交流を避けるようになっていきました。
そして、とうとう被害妄想から、Sさんは泥棒の被害にあったと、自ら警察に通報しました。
事情聴取の中で、話のつじつまが合わない事などから、被害は受けていないという事になりました。
さすがに娘さんも、「おかしい」事に気付き、病院に付き添い、受診する事にしました。

脳血管性認知症

診断は、脳血管性認知症でした。
数年前に患った軽い脳梗塞ですが、その後また、無症状の小さな梗塞ができていました。
結果的に、知らずのうちに患っていた認知症を、さらに悪化させることになっていました。
脳血管性認知症は、急に症状が出始める事があります。
脳梗塞で、脳の中で障害が起きている場所によって、ある事が出来たり、出来なかったりします。
アルツハイマー型と違って、徐々に低下していくのではなく、短時間のうちでも良い時と悪い時があります。
Sさんは一見、理解力の必要な会話もこなしていたり、普通に生活できているとみえていたので、周囲の友人、時々訪れる娘さんも、認知症だとは思わなかったのでしょう。
そして友人はほとんど同年代の高齢者ですから、Sさんが変な事を言っても、「認知症ではないか」などの冷静な判断は出来なかったと思われます。

介護サービスの介入

その後も独居生活を続ける事になり、ホームヘルパーを利用する事になりました。
週に3回、1時間ずつで、掃除、調理などの生活援助を共に行いました。
Sさんはこれまでも、簡単な調理などは自分で出来ていたので、自立を妨げないよう、見守りを重要視しました。
ヘルパーが入る事で、話し相手ができ、友人へ対しての暴言などは少なくなったようでした。
それでもヘルパーという存在を忘れ、泥棒がきたのかと思い、ヘルパーを追い返すという事もありました。
うまくヘルパーを受け入れ、帰り際「また明後日来ますね。」などと伝えても、5分後には忘れている事もあれば、当日しっかり覚えている事もあります。
覚えているかと思えば、その場を取り繕うための受け答えだったりもします。
ヘルパーが入り、安否確認や様子をみるだけでも、娘さん達は、安心されていました。

まとめ

脳血管性認知症ですから、調子の良い時と、悪い時があります。
認知できる時と、出来ない時があります。
それで当然なのです。
大切なのは、それを周囲が理解出来るという事です。
自宅で、可能な限り生活を続けたいという本人の希望を尊重し、現在は介護サービスを利用しながら在宅生活を送っていますが、今後ADL(日常生活動作)の低下などを考慮すると娘さんは自分が引きとるか、施設入所かを検討しているそうです。
認知症でありながらその事に誰にも気づかれずに生活されている、問題を抱えながら生活されている、独居の高齢者は多くいると思います。
周囲が少し気にかけてくれるだけでも、状況は少し変わると思います。

[参考記事]
「脳血管性認知症ってどんな症状があるの?」

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