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認知症による味覚と嗅覚の異変。お客様に茶と間違えて味噌汁を出す

 

 今回の記事は50代の関さん(女性)に記事を書いていただきました。

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 82歳になる母の様子がおかしくなり出したのが、3年前(2013年頃)でした。最初におかしいなと気づいたのが、台所に入りきれなくなった食材の数々です。週1回頼んでいた生協の食材や家事関係の消耗品などあふれんばかりに在庫が増えていました。

 冷凍庫も同じような食材が一杯で、以前は潔癖性で綺麗にしていた冷蔵庫の中は腐った野菜や放置した余り物の食材がカビが生えてもそのまま。冷蔵庫の中から異臭がするほどになり、気づいた私が「冷蔵庫臭くない?腐った物一杯入っているでしょ?」と言っても、「触らないで」「臭くないわよ」の一点張りで、なかなか自分のテリトリーである台所に入らせてくれません。あきらかに臭いに鈍感になってきていると感じた瞬間でした。

 また冷蔵と冷凍の区別もつかなくなり、アイスなどの冷凍品を冷蔵庫に入れてたり、醤油などの冷蔵すべきものを冷凍庫に入れたりと当たり前の日常の行動もおかしくなっていました。

[補足]
 認知症と嗅覚は関係があり、それを調べる検査キットもあります。

エーザイは米ペンシルベニア大学が開発した手法「アップシット」に基づいた嗅覚異常の検査キットを発売した。シートを嗅いでもらい、どんな臭いだったか4種類から選んでもらう。正確に回答できなかった場合、認知症をはじめ体の異常を疑ってもらう。

日本経済新聞より引用

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味覚にも異変が

 次におかしいと気づいたのが、味覚です。来客があった日、完璧主義の母はお客様をもてなそうと、お茶やお菓子など準備を始めました。それは夏の暑い日でした。

 お客様に冷たいお茶とお菓子を出した母でしたが、突然お客人が、お茶を一口飲んだ瞬間固まり、「ん?面白い味のお茶ですね!」と、母は得意げに「〇〇茶です」と答えましたが….。お客様は腑に落ちないような顔で「これは〇〇茶ではないですよね…」「…お出汁の味がします」ととても言いにくそうに…。そうです、母は出汁のパックとお茶のパックを間違えていたのです。

 パックを間違えるくらいならどこでもありそうな話であるが、母はここで「いえ、これは〇〇茶ですよ」と譲らず、お客様は母の押しの強さに負け「そうですか〇〇茶ですよね」と引いてくれました。その瞬間おそらく自分の間違えに気づいたはずでしたがが、どうしても引けない母を垣間見ることができました。

 こうやって、小さいことからだんだんと物忘れが始まり、鍋を焦がすこと何十回と、自分でも自分が信じられなくなったのか、工事を依頼してガスコンロをIHに変えたり、石油ストーブを電気ストーブに変えるなど、完璧主義の母らしい配慮が見られました。

 しかし、その頃からか、元からプライドが高く、若い頃から人に物を教える立場だった母にとって自分の記憶障害に落ち込み、悲観し、イライラした後、だんだんと感情が抑えられなくなり、怒りを表に出すようになりました。

 その後、全く外に出なくなり、身体も動かすことが少なくなるとともに、体力も落ち、食事もあまりできなくなりました。食事が出来ないために体力もどんどん落ちていく母。だんだん普段やっていた家事全般が辛くなるとともに、プライドの高い母は家事が上手くこなせないことに苛立ち、「こんな辛い家事をしなければならないのは、父がいるからだ」と、父に怒りの矛先が向くようになりました。

 この頃からかかりつけ医には老人性のウツと言われ、睡眠薬と精神安定剤を処方されていましたが、朝から夕方までほとんど寝て暮らし、夜になると眠れず、昼夜も逆転の生活でした。さらには毎晩「夜眠れない、辛い」と父を起こし、これにより父はだんだん精神的に追い詰められるまでになりました。

 非常にプライドの高かった母でしたが、容姿にも気を使わなくなり、化粧はもちろん髪の毛も白髪でボサボサのまま。目はだんだんと焦点が合わなくなり、表情も今までに見たこと無いほど生気を感じませんでした。

[補足]
 認知症と味覚の関係に関しての論文は実際にあります。それによるとアルツハイマー型認知症により、ニューロン間の情報の伝達が弱くなり、それにより味覚に異常が現れるそうです。

飲んでいる薬で、どのような変化が現れたのか

 症状が悪化とともに、かかりつけ医にも行きたがらなくなりました。そんな折、私の知り合いの医師に、相談した際に「漢方使ってみたら?」と教えてもらったのが「抑肝散」でした。読んで字のごとく、疳の虫を抑える薬で本来は子供の夜泣きに使う薬ですが、最近では怒り型の認知症にも使われるとのこと。ダメ元で使ってみようということになりました。

 また、知人の医師は「お母さんは体力が無いから、ただの「抑肝散」よりも、「抑肝散陳皮半夏」にしたほうがいいとアドバイスされ、その旨かかりつけ医に相談、処方してもらえることに。そして、その効果は驚くほど早く現れました。

 その薬を服用するようになって、まず初めに変わったのが表情でした。数日前まで口汚く父を罵っていた母はもうすっかりいなくなり、食欲も出てきて、日中は起きていられるようになりました。認知症という病気は良くならないと理解していたため、悪くなっていく母を見るしか方法はないと思っていたところ、この漢方は非常に救われました。

 しかしこの漢方が直接認知症に効いているわけではなく、認知症による不安や心配、怒りなどを抑えるだけですが、介護をしている立場にとって非常に助かります。同じボケるなら穏やかにぼけていってほしいと願う我々にとっては救いの薬となっています。

 西洋医学がメインの医師たちにとって、漢方はあまり認知されておらず、さらにはこの薬の本来の目的が「子供の疳の虫」に使う薬であるため、この薬が老人性の鬱や、神経質、またピック病などの激情型の認知症には効果があるということが認知されていないのが残念です。

 認知症患者が増える昨今、日本中で苦しむ、ピック病、激情型の認知症患者のご家族に少しでも知っていただけたらとペンととりました。

[参考記事]
「認知症の中でも一番多いアルツハイマー型認知症の症状は?」

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