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介護拒否のある認知症の方への対応例

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 これは在宅介護の現場の話です。Aさん(70代女性)は、介護拒否が酷く、施設もなかなか受け入れ先がなかったようです。そこで、在宅でヘルパーを1日に数回使いながら独居で過ごされることになりました。片麻痺もあり思うように体を動かすことができませんが、健側(麻痺が無い側)を上手に使い、居室内は座位での移動は可能な方とのことでした。

Aさんの介護拒否

 在宅でのケア内容は食事・排泄(おむつ交換)・清拭・更衣など身体的内容です。普段は穏やかでニコニコ笑っておられますが、なにかのスイッチが入るかのように豹変されます。体を触られることを嫌い、思い通りにならない時は手あたり次第物を投げたり、健側で殴ったり、けったりつねったり、全身で拒否を表される方でした。バランスを崩して倒れそうになってもお構いなしで、全身で拒否を表されます。

 それでも、なんとか陰部の保清と食事だけでも行わなければと必死でした。24時間に多くても3回しかヘルパーが入れず、排泄交換も3回だけです。ケアする側も、まともにAさんの拳を受けてしまうと痣ができ、つねられると爪が食い込み出血状態なりました。

介護拒否はスタッフ次第

 Aさんのケアを数人で対応していたのですが、そんなに拒否が強く出ないスタッフと、強く出るスタッフがいることに気づきました。最初は偶然と思っていたのですが、やはりこの傾向は変わらなかったので、拒否が出やすいスタッフに同行しました。

 拒否が出やすいスタッフにいつものようにケアをしてもらいましたが、声掛けも気になるほどの事もなく、最初は笑顔で迎えてくれていました。しかし、排泄介助の時には拒否が強くなりました。座位から寝転がることも拒否し、健側で暴れています。そこで、少し時間を置き、座位からご自身で横になられ、うつらうつらされた時に、手をつないで体をさすりながら行いました。眠気もあり、表情は穏やかになり排泄介助もスムーズに行えました。ケアそのものは荒いわけではなく、ゆっくり丁寧なケアでした。以上の行為を2人で行いました。

 排泄介助の時に拒否が出たのは何がいけなかったのか…

気づき

 今回は試しに二人で行ったため、オムツの交換に成功したました。Aさんの場合、一人体制のプランの為、これを基本にはできないと、悩みました。何度か関わっているうちに、こちらの緊張や不安や焦りなど、微妙な心の動きが伝わっているような気がしました。時間に追われて少し焦っていたり、排便まみれでどこから手を付けようかと不安になっていたりする時など、拒否が強くなっているような気がしました。

 そこで今度は、拒否が少ないスタッフに同行しました。排泄介助も拒否はあるものの手早く行い、常にアイコンタクトを行いながら、触れる度に触れることを伝え、拒否のしぐさには「嫌やね。ごめんね。」「汚れているから綺麗にするね。」など常に声掛けをしていました。ヘルパーはさらに合間には歌を口ずさみ、冗談を言ってはAさんの目を見て笑顔にしています。Aさんは時々笑いながら拳を出しますが、強いものではなく、スタッフは「あたらないもんねー」と、冗談めいた口調でかわして二人で遊んでいるようでした。そうこうしているうちに、汚染のひどい排泄介助や清拭や更衣が終わっていました。はたから見るとスタッフが独りで話して笑っているようにも見えますが、Aさんの反応をスタッフが代弁し、話しかけているような感じです。それに対して、Aさんがうなずいたり、眉間にしわを寄せたり、目や表情で会話をしているようでした。会話が成り立ってはいないかもしれませんが、拒否から楽しい雰囲気で意思の疎通はできています。

Aさんへの対応

 この拒否が少ないスタッフが言うには、「認知症の方は言葉が伝わらないこともが多いですが、ヘルパーの雰囲気はしっかり伝わっています。少しでも疲れた顔や嫌そうな態度を取ると、相手には伝わります」と、教えてくれました。

 何より、Aさん自身の苦痛の時間が減るのもそうですが、スタッフの怪我のリスクが下がることは大きなメリットです。他のスタッフにも、この拒否が少ないスタッフのケアを見てもらうことで手法を共有しました。口で言ってもなかなか伝わらないので、実際に見てもらって、研修のような形式で教えていきました。その結果、拒否が強かったスタッフも慣れてきて、アイコンタクトで笑い合えるようになりました。

 意思の疎通が困難だからと言ってあきらめるのではなく、その方にあった言葉がけや笑顔でのアイコンタクトは有効だと思います。今回のように、スタッフの言動に対しての相手の反応をしっかり観察することが、介護拒否のサポートにつながると思います。

[参考記事]
「施設で徘徊、口論、介護拒否をしてる認知症の入居者に対する対応」

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