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認知症のデイサービスに嘘を言って利用者を連れて行った結果…

 

 アルツハイマー型認知症のKさん(80代女性)は、いつもニコニコと笑顔を絶やさない方でしたが、実はとても頑固で、スタッフが誘導してもご自身の気に入らないことには一切応じてくれません。

 お住まいからデイサービスに行くためのバスに乗っていただくのに、一悶着では済みません。なだめたり、すかしたりして、やっと乗っていただけても、到着しても今度は降りてくれません。そのまま、Uターンということも一度や二度ではありませんでした。ご自宅に居ても特に何かをする、というわけでもありません。

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なぜ、デイケアに行きたがらないのか

 なぜこのようなことになるのか考えたところ、お誘いするときに「おいしいものを食べにいきましょう」などと「嘘」とはいえませんが(昼食やおやつを準備してあるので)、真実ともいえない言葉で、とりあえずバスに乗っていただいていたからだろう、ということになりました。

 どんなに認知症が進んでいても、いえ進んでいるからこそ、適当な甘言は通用しません。支援する側は、困り果て、とにかくその場をしのぐために、つい甘言でごまかしてしまうことはありがちですが、認知症の方の認知力は想像以上の場合が多いのです。

 「またここに騙されて連れてこられた」という記憶は、かなり認知症の進んだ方でも残っているものです。『騙された』『不愉快だった』というような感情は良い感情よりも残りやすいと言われています。このような感情が残っていては継続した支援ができなくなってしまいます。

デイケアに行きたがらないことへの対策

 こういう場合は、ご本人が行きたくないのなら、それでもいいですよ、という態度をしばらく続けてみるのも効果的です。

「行きたくなったら行きましょう」
「今日はこんなことをするのでKさん楽しいかもしれませんよ」
といった声掛けを続けながら、ご本人がその気になったときだけ、お連れするのです。『騙された』というイメージを払拭することから始めなければならないのです。

徘徊癖への対策

 またKさんは、徘徊癖があり、デイケアの最中でも目を離すとすぐに玄関に行ってしまいます。開かない扉をどんどんと、ものすごい力で叩くこともあります。この際も、ご自身の意向を汲むことが、結果的には良かったと思います。

 他の方のご支援もありますから、Kさんにだけ時間を割くことは難しいのですが、少しの時間でもお散歩にお付き合いすることで、落ち着かれたことも多くありました。また、個別の対応ですが、好きで得意なボール投げにしばらくお付き合いするのも効果的でした。

 その後、楽しそうに皆の輪に入っていく様子には、スタッフ全員喜んだものです。その場だけ言うことをきいてもらっても、閉じ込めても、一時しのぎにしかならないうえ、ご本人、介護者ともに嫌な思いをしてしまう結果になります。

 また、あまり現実的な解決策ではありませんが、徘徊癖のある方の跡を一日中ついて歩いているという支援をしている方もいらっしゃいます。徘徊癖のある方は健脚の方が多く、介護者が若くても一日中ついて歩くのはかなりの労力ですが、ご本人の意思をそこまで尊重した支援をされている方もいるのです。

 徘徊する方本人は「なぜ歩いていかなくてはいけないのか」という理由が分からないまま、衝動がそうさせているのです。ですので、一体どこに行きたいのか、なぜ出て行ってしまうのかということは介護する人にも分からないケースが多いです。何かのきっかけで徘徊の理由が分かる場合もありますが、ほとんどのケースで分かりません。

まとめ

 介護支援には限界があります。それはどうしようもないことです。ですが、否定したり、閉じ込めたりするより、歩み寄りによって、よりよい関係が築ければ、支援がしやすくなるのは事実です。

 認知症の方を相手にする場合、最初に歩み寄るのは介護をする側になります。近親者など、感情的になる場合には難しい場合が多いでしょう。プロでも、時間的に難しいことが多いはずです。

 しかし、押さえつける支援とは異なり、理解を示し続けることで、お互いの気持ちがふっと緩む瞬間が必ず訪れるはずです。その瞬間ひとつひとつの積み重ねを大切にできれば、支援する側、される側、お互いに幸せになれるのではないでしょうか。

[参考記事]
「デイサービスへの拒否が声掛けを変えるだけでなくなる事例」

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