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煙草を吸える認知症デイサービスに変更後、通所拒否が無くなった事例

 

今回の記事ではデイサービスに通うのを拒否していた認知症の女性が事業者を変えることで拒否が無くなった事例をお話しします。

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乱れた生活から

Tさん(女性、70代後半)は、認知症で、高血圧症の持病があります。体の動きは日常生活を送るには特に問題なく、歩行はゆっくりですが、自力で可能です。週に1回、ホームヘルパーによる生活援助(主に掃除)を受けています。5年程前に夫を亡くし、一人暮らしをしており、長男、次男とも家庭を持ち、遠くに住んでいます。

ヘルパーの存在は忘れなくても、何曜日の何時に来るかまでは、なかなか覚えていません。Tさんはいつも朝起きる時間が遅く、9時半に訪問するヘルパーはまず、チャイムを鳴らし起床するのを待ちます。そして、鍵を開けて頂くところから始まります。室内はいつも散らかっていて、ビールの空き缶、たばこの吸殻もよくあります。高血圧症でありながら、お酒やたばこを嗜好としていました。

通院は、どうにか自分で行っていましたが、もらってきた薬は飲み忘れていることも多い状態です。そんなTさんの生活を心配していた息子さんの希望もあり、デイサービスに通うことになりました。少しでも規則正しい生活を送れることを目標としていました。

他者との関わりが多くなり

起床時間が遅く、何曜日にデイサービスに行くか忘れてしまうことがあるため、ヘルパーが朝入り、朝の身支度の援助から送り出しまでをすることになりました。

週に2回、通っていましたが、他の利用者さんとの会話が成り立たないことが多くありました。例えば、出身地を聞かれると答えられたのに、今住んでいるところを聞かれると、聞かれるたびに答える地名が違うなど、認知症の方に良く見られる「話を取り繕う言動」が多くなりました。そうすると「前と言っていることが違うではないか。何を言っているのTさん」と笑われることもあり、Tさんの自尊心が傷ついてしまいました。そして、分からない自分に戸惑っている様子もありました。

今までは、ほとんど一人で家で過ごしていたTさんなので、客観的に自分のことを判断できない状態でしたが、人に言われて初めて「少しおかしいのではないか」と気づいたのだと思います。ヘルパーと会話をしても「何を言っているんですか」などと否定するような指摘はしませんし、会話は成り立つように関わってきました。デイサービスの利用者さんより初めて指摘され「恥をかきたくない」との思いから、デイサービスを休みがちになってしまいました。

選択の自由

『あそこに行けば恥をかく』と感じてしまったことは、なかなか忘れないTさんでした。それでも、とにかく通ってほしいと、息子さんからの強い希望もありました。

そこで、別の事業所に変えてみるということになりました。Tさんに説明し、一度見学に行ってみたところ、そこの雰囲気が合ったようで「また行ってもいい」と、あまり不安がない様子でした。なによりそのデイサービスでは、喫煙も許可していました(しかし、煙草を吸える本数は1日1本)。

最初は事業者を変えたことを忘れ、「行かない」と話すこともありましたが、「別なほう」と説明すると思い出し、あまり拒否なく出かけることができました。今のところ、恥をかく思いをせず過ごせています。

確かに煙草は体に悪いです。しかし最初からすべて取り上げるよりも、デイサービスに通い少しでも規則正しい生活を送ること、そして息子さんもそれを希望していることを優先したとき、妥協してもいい部分もあるものだと感じました。

拒否されたデイサービス事業所は、決して悪い事業所ではありません。人と事業所、人と人も、少なからず合う、合わないがあると思います。
認知症だからといって、選択の自由を無視できません。自分の合う場所を選ぶことができたTさんは、そのデイサービスを楽しみにしています。今ではタバコは吸いますが、お酒はほとんど飲んでいません。

[参考記事]
「デイサービスで他の利用者と仲良くできない認知症高齢者の実際」

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