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認知症による見当識障害や徘徊がユマニチュードにより改善

 

 アルツハイマー型認知症のA様(80代女性)のお話をします。A様は介護職員の手を借りずとも一人で歩くことができますが、認知症の症状として見当識障害がありました。具体的な見当識障害として、「今何処に自分がいるのか」「日付感覚・時間」「昼夜逆転」があります。

 さらにA様は徘徊・帰宅願望があり、階段前やエレベーター前に立ち施設外へ行こうとする行動が多々見られていました。その為私たちスタッフはA様が階段を下りないように、エレベーターに乗らないように、転倒しないように見守りを始めました。

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A様の見当識障害、徘徊に対する対応

 A様は穏やかな性格であったが表情は硬く、発語は少ないです。そのため、当初はなかなか私たちに口を開いてくれることがなかった為、まずは「どうして徘徊するか?」「帰宅願望が強いのか?」に視点を置いて検討を行いました。

 A様は元々は専業主婦をしており、綺麗好きなため毎日忙しく家のことをやっていたと家族の人から聞いておりました。A様の性格と併せて考えてみて、以下のような予測を立てました。

「今いる場所はよく分からないけど退屈である→ここに居たくない→他の場所に行きたい→徘徊」

 このような状況下で私たちが無理に徘徊を止めさせることはA様にとって良いことではないと考察しました。そこでユマニチュードの導入を行いました。ユマニチュードとは「人とは何かという価値観」を持って接する介護法です。

例えば
〇話すときの視線を上からみることはせず平行に保つ
〇返答がなくても、温かい言葉をかける
〇人は立って歩く生き物だという認識で、歩いてもらうことを促す
などです。

 私たちはA様に「生きている」と感じて頂きたいと思って介護を行いました。A様とのコミュニケーションを大切にして、信頼関係を築く為に以下の事を行い、評価しました。

 先述の具体的な見当識障害に基づいて約3ケ月の活動をしました。

・「今何処に自分がいるのか」:
 まず私たちはこの施設で働いているスタッフであるということ。ご家族の代わりとしてA様の身の回りのお世話をさせて頂くということを伝えしました。

 今いる場所が分からないと不安になり、徘徊に繋がる可能性があるため、ここは何処かということを根気よく伝えました。

・「日付感覚・時間」:
 A様の近くに小型時計の設置。毎日朝食前に月日を大きく紙に掲示し、読み上げを行う。

・「昼夜逆転」:
 夜間帯の徘徊も見られた為、外を見て頂き今は夜間であるということを認識して頂きました。また、朝日を浴びてもらうことで、日中であることを認識してもらい、歩行を促しました。

・「その他」:
 A様は元々主婦であるということから、主婦的なことを好まれる傾向にあると感じた為、「A様の興味や関心はなんだろう?」と模索しました。そこで見守りを行う際に私たちの仕事に興味を持つことが多々見られました。

 関心を示したことは「ゴミ箱を作るために紙を使って折ること」「袋を畳むこと」「テーブル拭き」「配りもの」「掃除」です。このように、私たちの職務に意欲関心を示していたので、お手伝いをしていただきました。スタッフと一緒に同じことをしている時のA様の表情は非常に豊かでした。

以上の対応の結果..

 結果、入所当時のA様と比較すると表情も柔らかになり、笑顔や発語が増えたのである。これはスタッフ皆でA様に声掛けを行い、興味を抱かれたことを一緒にやったことで信頼関係の構築ができたからではと考察できます。

 A様との信頼関係の構築ができたことにより階段前やエレベーター前に行くことは、すっかりなくなったのである。日中は離床を促し、スタッフの後を一緒に回るようになったことで夜間の徘徊もなくなったのです。

 今回の事例で気づいたこと、学んだことは利用者に寄り添うことである。見当識障害を抱える利用者と関わる際、その人の言動や行動を否定しないことが大切ある。同時にスタッフの都合だけで介護をしないということ。一人ひとりの特性・個性に配慮し自由や権利を尊重することが大切である。

[参考記事]
「認知症による徘徊と見当識障害のある女性に対する対応」

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