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認知症による帰宅願望に対して有効な介護者による声かけ

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自宅で1人暮らしをされていたTさん(86歳・男性)は、肺気腫と診断され病院で入院されていました。
退院後には病状が落ち着いていましたが、脳血管性認知症もあり、在宅での生活が困難とのことで特別養護老人ホームへの入所が決定しました。
入所当日の夕方頃より施設フロアを何度も行き来されたり、エレベーターのボタンを押して外に出ようとしたり、「家に帰して。降ろして。ここにいたら殺される。」と職員を叩こうとするなどの帰宅願望が頻繁に見られました。
理由を聞くも「帰りたい」の一点張りで徘徊が続き、その都度フロア職員全員で見守りを行い、「降りられませんよ」と声をかけていましたが、一度他の利用者の家族と一緒にエレベーターで降りてしまうということが起きました。

帰宅願望に対する対策

その時には事務所の職員が気付き、外に出られることは無かったのですが、今後このようなことが起きないようにと対策を考えました。
まず、声掛けで一時的にも帰宅願望が収まった成功事例をもとに、職員全員がTさんの帰宅願望に対して共通して同じことを言うように徹底しました。
「帰りたい」と言われた時には、
「どの辺りに住まれていますか?そこは少し遠いですね。車が今無いので送ることができません。ここでゆっくりとしていきませんか?」
と声をかけて、好物であったホットのココアを提供しました。
帰宅の訴えが完全に収まることは無いですが、声掛けを統一することで頭の中の混乱を避けることができ、ココアを飲まれている間に昔話をしてくださるなど興奮されることは無くなりました。
もう一つは「エレベーターで下に降りたい」という訴えがあると一緒に下に降りてみることにしました。
歩行してエレベーターで下に降りると少し疲れている様子がありました。
その時には外が見える場所でゆっくり休んでいただき、「あの建物は見たことあるな」と昔からある煙突を眺めながら楽しまれている様子が伺えました。
Tさんの入所されている特別養護老人ホームはご自宅の近くにあるので、見慣れ風景を見て落ち着いていただくということを期待してのことです。

また、施設=自宅と思えるように、居室の環境を本人様の馴染のあるものをそろえたり、昔仕事が農家であったことを知り、家庭菜園をしていただいたりという機会を作りました。
そうすることで、徐々に慣れていただきました。

食事と排泄に対する対策

また、Tさんは、食事と排泄の2つの面でも問題がありました。
1つ目は、食事の際に目の前にあるお皿のおかずのみを食べ、他のお皿の分を食べませんでした。
職員が食器の位置を変えて提供していましたが、1皿食べたら手が止まりを繰り返し、その後はスプーンでおかずをお皿から机の上に乗せたりと食事で遊ばれるような行為が繰り返されました。
始めは食欲が無いのかなと思いましたが、職員が介助に入るとしっかりと食べられていました。
そこで、ごはんを小さい俵型のサイズで食べやすくしたことと、俵型のごはんと主食、副食、副菜をワンプレートとして提供することにしました。
そうすることで手を伸ばさなくても食べることができるようになり、どのおかずがあるのか一目で分かるので、時間がかかることなく食事をご自分で全量召し上がることが出来るようになりました。

2つ目は、5分おきにトイレに行くことです。
排尿が無いにも関わらずトイレへの訴えが強く、その度に何度も歩かれていたので、持病の喘息の喘鳴も聞かれました。
そこで、食事の席をフロアトイレに近い位置にし、歩く距離を短くさせてもらいました。
また、トイレに行かれた際に5~6回に1回は排尿があり、排尿感覚はあることが分かりました。
なので、だいたい何分ほどでしっかりと排尿が出るのかを調べ記録したところ、2時間おきに排尿していることが分かりました。
そのため、この時間を目安に排泄から意識をそらせるように別の興味のあること(家庭菜園やカラオケ)を行いました。
さらに、残尿感が見られているのではないかとのことで、泌尿器の医師と相談し漢方薬の服用をしていただいています。
今でも日によってのむらはありますが、訴えの頻度は1時間に1回ほどと減っています。

Tさんの訴えに対して、介護者として何が出来るか、何をすると希望に沿った介助が行えるのかを考え実行したことで、声に出さなくても顔の表情で良いのか嫌なのかが分かるようになりました。
介助者としてその表情を見逃さないように、支援していきたいと思いました。

[参考記事]
「[認知症介護] 夕暮れ症候群による帰宅願望への対応」

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