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認知症による物盗られ妄想への対応はどうすればいいのか

 

 アルツハイマー型認知症のBさんは要介護3の76歳女性です。ADL(日常生活動作)は比較的正常に保たれていますが、認知症状による問題行動がひどくなり、在宅での生活は困難とのことで、特別養護老人ホームに入所されました。

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認知症状の一つ「物盗られ妄想」でパニック

 物忘れはあり、人の名前は分からなくなってしまうBさんですが、もともと社交的な方でスタッフとよくお話もされます。仕事用のユニホームを着ていると「この人は自分の世話をしてくれる人」と漠然とした安心感があり、「物盗られ妄想」が起こった時も、「スタッフが盗った」とは考えられませんでした。

 Bさんの訴えは、「夜に窓の外から人が入ってきて通帳を盗んでいった」というものでした。貴重品は、事務所でお預かりしているので、本人と一緒に事務所に行き通帳を確認していただくと「勘違いだったね」と通帳に関しては安心されましたが、「何か別のものを盗られたはずだ」と別の不安が湧き起ります。

スタッフで対応を話し合う

 毎日頻繁に「昨日の夜も知らない人が窓から入ってきた」と訴えられるので、本人に安心していただけるよう対応をスタッフで話し合いました。まず、窓にもう一つカギを取り付けることにしました。物盗られ妄想とは分かっていますが、物理的に対策をすると安心されるのではと考えました。工事などは不要のホームセンターで売られているカギです。

 寝る前には、Bさんと窓が締まっていることを確認します。「これで安心だね」と声をかけると本人も頷きます。「安心だね」という言葉はよく使うようにしました。夜間の部屋の見回りも増やすようにしました。見回り時に物盗られ妄想の訴えのあった時は、スタッフが外回りも確認し、本人に異常がなかったことを伝えるようにしました。

本人と一緒に日用品の確認を行う

 もう一つ、物盗られ妄想に対して行った対応があります。日用品は、本人の棚にしまってあるのですが、本人と一緒に内容を確認し、紙に書いて貼りだすようにしました。グレーのTシャツ1枚、箱入りティシュ3個というような感じです。「盗られた」と言われた時に、紙と物を一緒に確認することで本人も安心されます。

 物が見つかった時も、「奥にあるからわからなかったんだね」と本人の勘違いを責めないようにしました。窓からの侵入者に対しても、「木が窓にあたったのがそのように感じたのかもしれないね」というように、本人の話を否定しないようにしました。

振り返って思うこと

 結果的に、認知症状が進むに連れて関心が他に移り、1年もすると物盗られ妄想が少なくなりました。Bさんの場合は「スタッフに盗られた」という思い込みがなかったので、他の盗られ妄想の人よりも支援がしやすかったですが、盗られ妄想のある方の支援の場合、妄想に対してどれだけスタッフが真剣に耳を傾け、対処するための行動をとれるかが大切なのではないかと思いました。

 一緒に探したり、日用品の確認をしたり、カギをつけたり、窓からの不審者を探したりできたことが、Bさんの信用を得ることができ、安心していただけたのではないかと思います。認知症のある方は漠然とした不安の中におられるので、味方になって安心してもらえる支援が大切だと思います。

[参考記事]
「認知症の物盗られ妄想にどう対応しているの?」

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