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認知症高齢者に対しての適当な対応は症状を悪化させる

 

 今回は若年性認知症であるMさん(68歳男性)のお話をします。Mさんは時々ショートステイを利用されながら夫婦仲良く暮らしていました。

 しかし、奥様が他界し、若年性認知症もあるということから1人で暮らすことが難しくなり、特別養護老人ホームへ入所となりました。

 ご自分で歩くことは出来ますが、歩行は不安定で付き添いが必要でした。入所後からしばらくして、ベッド上にて立ち上がり、電気を触ろうとされたり、天井を触ろうする様子が見られるようになりました。

 家庭ではどのようにすごされていたか息子さんに伺うと、「昔から布団で寝ていました。夜間のトイレは母の付き添いで行っていました」と言われました。そのため、ベッドでの生活は慣れておらず、転倒の危険もあることからベッドから布団へ変更しました。

 四つん這いで居室内移動されることもあったため布団の下と居室の床全体にジョイントマットを敷きました。また、簡易の立ち上がりをサポートする手すりが家にあるとのことで息子さんに持って来ていただき、布団の横に置かせてもらいました。居室から出られたら職員が気づくようにドアに音が鳴るものを設置し、その際には付き添いを行っていました。

 家で過ごされていた寝室に近づけるようにユニットの居室の家具や寝具などを家で使っていたものにして、以前の生活習慣を変えないようにしていきました。

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家に帰りたいと言う訴えとその対応

 ある日、「私はいつまでここにいるのですか?嫁の迎えはいつ来るのですか?」と頻回に尋ねられるようになりました。始めは職員が奥様になりきり、電話越しに会話するなどMさんの訴えに曖昧な返事をしていましたが、家のことなど心配で落ち着きがなく、フロアを徘徊されたり、時折涙ぐまれたりされ、介助に対しても抵抗されるようになりました。

 行事なども全く参加されず、帰る準備をしているか、寝ているかという状況でした。そこで、ありのままの事実(この施設で生活していくことや奥様が亡くなられたこと)をゆっくりとMさんに分かるように伝えました。

 落ち込まれている様子が見られたため、身体を擦ったり、不安に思っている事をじっくりと聞く事にしました。奥様が亡くなられたことや施設で生活することをその場では分かっていても時間が経つと忘れてしまうため、何度も繰り返し事実を伝えていきました。

 事実を職員がはっきりと伝えることで、Mさんの言葉が変わってきました。施設で暮らすということに対して初めは不安な表情で「帰りたい」と言われるばかりでしたが、「あなたもここで暮らしているの?」や「ミー(Mさんが昔飼っていた猫)は大丈夫かな?」等になっていきました。また、奥様に対しても生きていらっしゃった時の話を楽しそうにしてくれるようにもなりました。

まとめ

 Mさんのおかげで、認知症だから分からないだろうと適当にごまかす対応することでかえって認知症が悪化することを再認識しました。

 初めは職員がMさんの奥さんに成り代わって電話で対応していましたが、上手く行ったのは最初だけです。どこかで電話越しの声は妻ではないことを感じ取っていたのだと思います。

[参考記事]
「[認知症介護] 夕暮れ症候群による帰宅願望への対応」

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