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認知症による性的行為(お尻や胸を触る)を薬で抑えた症例

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定員20名のデイサービスを利用している男性利用者のHさんはまだ65歳を過ぎたぐらいの利用者の中では一番若いですが、アルツハイマー型認知症と診断されています。
子供はおらず、奥様と二人で生活をしていますが家にいると外への徘徊があり、帰ってくる事ができなくなってしまいます。
体格も良く、身体的にはなんら問題のないHさんの世話を日中ずっとしている事に奥様が限界だった事がデイサービスの開始理由ですが、Hさんにはある問題行動がありました。

エスカレートする性的行為への対応

普段落ち着いている状態のHさんはあまり話をする事なく、いつもスタッフの会話に合槌を打つぐらいで笑顔も少ない方です。
そんな様子の中でもデイサービスの利用は嫌いではないようで、いつもお迎えに行くと積極的に車に乗り込んでくれます。
またHさんには利用開始時はみんな知らなかった特技がある事が発覚しました。
偶然他の利用者がやっていた塗り絵を見たHさんは「自分もやりたい」とスタッフにお願いし、色鉛筆で塗り絵をし始めました。
ごく普通のネットで用意できる動物の塗り絵だったのですがHさんが塗ってみると、配色が普通では思いつかないような鮮やかなもので、どこかの画家が塗ったような出来に仕上がりました。
それ以来、スタッフや他利用者から「先生」と呼ばれるようになり、Hさんも満更でもない様子で時折笑顔も見られました。
一見穏やかな感じのHさん、そのまま穏やかなまま過ごせれば良かったのですが、すっかりデイサービスに慣れてきた頃に問題行動が出始めます。
それは女性スタッフへの接触行為です。
この情報は利用前にケアマネジャーから聞いていたのでスタッフは全員周知していました。
Hさんは今のデイサービスに来る前に利用していたデイサービスでも行き過ぎた接触行為があり、そこを退所する形になってしまったとの事です。
女性スタッフは特に注意するようにはしていましたが、だんだんと慣れてきたHさんの行動はエスカレートしていってしまいます。
お尻や胸を触るなどの身体のタッチに続き、「触らせて」などの性的発言、さらにはズボンをわざと下げ、下半身を見せつけようとする行為です。
Hさんの行為をうまく受け流していたベテランスタッフでさえも毎回続く行為に根を上げてしまい、責任者へ報告、ケアマネジャーへ連絡をする事になりました。

カンファレンスの結果、精神科へ

数日後、奥様とケアマネジャーを含め、カンファレンスが開催されました。
デイサービスとしてはHさんの利用を断りたくはないが、このままではスタッフに危害が出る恐れがあるので利用が難しい事を伝えました。
一方の奥様からは前のデイサービス、さらにその前のデイサービスでも同じ行動をして退所させられてしまった事もあり、他のデイサービスに行っても同じなので、どうしてもここを利用させてほしいとお願いがありました。
ただこのままでは難しいという事で、ケアマネジャーからの打開案が入ります。
それは「一度精神科へ通わせてはどうか」という事でした。
普段は落ち着いているHさんですが利用に慣れて緊張が解けてしまうと行動がエスカレートしてしまうのは、興奮によって行動が自制できないからでは?という事でした。
デイサービスを止めたくないという事で奥様も合意し、カンファレンスの後、Hさんは精神科を受診、そして入院をする事になりました。

その後

Hさんが退院をしてきたのは約2カ月後ぐらいです。
ケアマネジャーから精神病院を退院した事、問題行動をする事は全くなくなった事を告げられ、いざHさんの利用再開です。
Hさんの変化にはスタッフ全員驚きました。
Hさんは見た目や塗り絵をする様子に変わりはないものの、一日過ごす中で以前のような問題行動は起こさなくなりました。
スタッフと会話をして頷き、食事を食べ、塗り絵をして静かに過ごすという、落ち着いたルーチンでデイの一日を過ごしていきます。
Hさんの行動を抑制しているのは飲み薬でした。
認知症の進行を抑止する薬の他、精神を安定させる薬を服薬していました。
問題行動のなくなったHさんには安心できる面もありますが、一つ悲しくなった面もあります。
Hさんは笑わなくなりました。
以前から大笑いをする方ではなかったですが微笑を浮かべる事もなくなり、言葉数もさらに少なくなりました。
Hさんは淡々と塗り絵をして毎日を過ごしています。
服薬だけでここまで変わってしまうのかと思うと、薬の力は偉大で恐ろしくもあります。

本人、家族、回りの全てが満足できる結果になるには、とても難しい問題だという事を実感しました。

[参考記事]
「認知症による性的行為(職員や利用者の体を触る)に対する対応」

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