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軽度認知症で気性が激しい人が穏やかになった対応とは

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 Cさん(女性、80代)は、月に1回長期でショートステイをご利用されるお客様ですが、介護度2で、軽度の認知症です。歩行は安定しており、身の回りのことも声掛けを行えば、充分にご自分で出来る方です。

普段から気性が激しいCさん

 普段から気性が激しく、喜怒がはっきりされている方で、楽しそうにされていても、いつ怒りのスイッチが入るか分からない為、他のお客様とトラブルになることもしばしば。一度、怒りのスイッチが入ると、その場では手のほどこしようがありません。

いつもお腹の中には〇〇が

 Cさんはいつもお腹の中に何かを隠しています。ご自分の帽子や入れ歯、配膳された食器など、いろいろなものをお腹の中に隠しているのですが、一番多いのは使用済みのパットです。Cさんは、トイレに頻回に行かれる方で、ズボンまでべちゃべちゃになっている事が多くあります。その都度、職員は声掛けしトイレ誘導を行いますが、そこで怒りのスイッチが入ります。大抵は説得を続ければ何とか応じてくれますが、ひどい時には職員はトイレ内から追い出され、Cさんはトイレの鍵をかけ、立てこもってしまいます。

「ここは私の部屋だぞ!」

 ショートステイの時のCさんの部屋は固定をしているのですが、他の居室に間違って入ることが多々あります。それも決まって「ある一つの部屋のみ」です。昼夜問わず居室を間違えている為、その都度「Cさんのお部屋に案内します」と声掛けをしますが、そこでもまた、怒りスイッチが入ります。
「ここは私の部屋だぞ!入って何が悪いのさ!」
と大声で怒鳴り、職員たちに対して暴力も振るいます。

 間違えてしまう居室に人がいなければ、居室清掃をするだけで終わりますが、他のお客様がいる時は大変です。職員の知らぬ間に間違えて入り、寝ている他のお客様に「人の部屋でなにやっているのだ!」と怒鳴りちらし、部屋から追い出そうとする為、怖くて部屋にいられないと言われるお客様も出てきてしまいました。

とった策は部屋替え

 この事態を重く見た職員たちは、Cさんがいつも間違えて入ってしまう部屋をCさんの居室にあてることにしました。Cさんはいつものように以前から間違えて入ってしまう部屋に入っていきます。狙い通りになり、職員たちは上手くいった!と喜んでいました。しかし、なぜか次の日からCさんは、以前の固定していた部屋に行くようになったのです。

元の部屋に戻ろうとするCさん

 次の日から、Cさんは以前の固定していた部屋に戻るようになりました。「お部屋が違いますよ」と声掛けをしても、「ここは私の部屋だろうが!」と怒鳴ります。そして、変更後のお部屋に案内しても、自分の部屋だとは信じてもらえず、「なんでここに私のモノがあるのだ!返せ!」ともっと怒らせてしまうこととなったのです。

 職員たちは、自分の部屋と見て分かってもらうように、居室の中にも大きな表札を設けました。これをすることで、なんとか部屋を信じてもらう事は出来るようになりました。

Cさんを見つめなおした

 その後も、部屋を間違える頻度が増え、最終的には、全居室を自分の部屋と勘違いするようになりました。今回、部屋を変えた事によって単に部屋を間違えているわけではない可能性が出てきました。Cさんは、夕食後のお客様たちが居室に戻られた後、食堂に残って「誰もいない」とつぶやいています。その後、居室間違えが始まるのです。一連の流れを見ると、軽度の認知症に加え、かまって欲しいという気持ちがあるのではないかと考えました。

Cさんの行動を変える為に行った、たった1つの事。

 翌日より、夕食後Cさんが帰るとき、「お部屋まで送るよ」と言って居室まで、お話をしながら案内をしてみました。いつもであればしない行為です。すると、Cさんは以前の部屋に入ろうとするのです。しかし、そこで「ごめんなさい。事情があってお部屋が変更になったんですよ」といい、新しい居室に案内をしました。いつもなら怒り狂うCさんですが、「ありがとう!ありがとう!また会おうね。明日ね。」と涙目でお礼を伝えてくれました。

その後のCさん

 上記の声掛けを実践した翌日から、お腹の中に隠しているモノを回収するときも、居室を案内する時も、以前よりもっともっと親身に、そして柔らかくと意識して声掛けを行っていきました。

 いまだにお腹の中に隠す行動や居室間違えは治っていません。しかし、大きく変わったことが1つありました。それは、急に怒ったり、手を付けられないほど暴れることが減ったことです。穏やかに過ごされる時間がとても長くなったのです。それに伴ってか、他のお客様と楽しく会話をする姿も増えました。

 夕食後、食堂で一人寂しげに座っているCさんは、きっと寂しかったのだと思います。そして、認知症の症状で部屋を間違えている事に気づかず、職員から「部屋を間違っている」と言われても、腹が立つだけです。

私がしたことは、たった1つ。
相手の立場を考えたコミュニケーションです。

[参考記事]
「認知症を原因とする暴言・暴力行為を防ぐために行なった対応」

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