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認知症による苛立ちや暴力行為が軽減した対応例

 

 アルツハイマー型認知症の70代のF様(男性)は、軽度の認知症を患っています。F様は昔、大手企業の管理職としての経歴を持ち、服装、挨拶、気配り等しっかりされた方です。お住まいは息子夫婦と奥様との2世帯同居暮らしです。

 施設利用前の体験時は、特別、認知症の症状もなく、多くの方と会話を楽しみながら、職員の指示を受けて過ごされました。当初、家族からは「苛立ち、暴力」が起き、施設で他の方に迷惑をかける心配をしていましたが、体験時は無事に過ごされ、週二回のデイサービス利用を開始しました。

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施設での状況

 施設での利用が始まり、当初、施設の雰囲気に慣れるまではF様は不安が見られ、職員が積極的にコミュニケーションを取りながら、共存できるように努めました。

 若い頃からいくつものスポーツを経験して来たことから、身体を動かすことがとても好きです。マシンを使った機能訓練にとても集中して取組まれています。テーブルを囲んで、他の利用者とも笑顔で会話を楽しまれています。

 施設では、自宅で起きている「苛立ち、暴力」といった症状は見られませんでした。また、その兆候もありませんでした。

自宅での状況変化

 デイサービスを利用し始めてから、自宅での「苛立ち、暴力」が減ったと奥様から話を伺いました。デイサービスに行った日には、必ずその日の出来事を楽しそうに奥様に話しているとの事でした。次の利用日を楽しみにしているとの話を聞き、我々はたいへん嬉しく思いました。

数か月後、施設に慣れるが..

 F様が施設に慣れだしてきた時、職員に対し「わがまま」を言うようになりました。レクレーションの順番待ちの際、待つ事ができず「先にやらせて欲しい」との訴えが徐々に増え出しました。

 F様は「待っているとイライラする。だから先にして欲しい」と要望がありました。F様だけ特別な事情がない限り要望を聞くことは、他の利用者に対して失礼な行為となるため、きちんと説明する事で、その場をしのぐことが出来ました。

 しかし、「イライラ」してくると足をばたばたさせ落ち着きがなくなり、大声を出す傾向がありました。今まで施設では見られなかった言動であり、ケアマネージャーに相談し、奥様と自宅での様子を聞かせていただきました。自宅では、自分の思い通りにならないと「イライラし出す」との事でした。これだけ聞くと、F様のもともとの性格ではないかとも考えられました。

引き続き様子観察

 レクレーションする際には、順番を最初の方にして対応しました。すると、順番待ちで「イライラ」することがなくなりました。

 しかし、今度は参加者全員が終わるまで待つ事ができないので、職員が会話で気を逸らし対応しました。その後も様子を見ながら随時対応できる体制を整え、職員が隣でF様と会話を行う事で「イライラ」が起きない工夫をしました。

【自宅では奥様が管理監督】

 自宅での様子を見ようとの事で、ケアマネージャーと毎週交互にF様宅に訪問をすることになりました。自宅でどの様な生活をしているのか、来客がいる場合の様子はどうなのだろうか?観察することになりました。

 その結果、分かった事がありました。F様は自宅では奥様の意見に服従であり、全くと言ってF様の自由がなかった事です。自宅では何をするにも奥様の管理下に置かれていました。ケアマネージャーと相談し、自宅での自由がないためストレスが「苛立ち、暴力」の原因の一つであることは間違いないと確証しました。

 奥様に「しばらく自宅での生活に対し、F様の意向に合わせてあげたらどうでしょう?」と相談し、実行していただくことになりました。それから1カ月して、F様に話を聞くと、「自宅での居心地が良くなった」と嬉しそうに話されました。

 認知症の症状について、家族が認知症を理解することが第一に必要です。理解していない家族の場合、怒る、叱る、焦らせる、うるさく話すなど、認知症患者に対し悪影響を及ぼす言動を起こす傾向があります。ケアマネージャー、施設相談員等としっかり話して、対策、計画をつくり実践し暖かく見守ることが必要と再確認しました。

[参考記事]
「認知症を原因とする暴言・暴力行為を防ぐために行なった対応」

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