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施設入所中に環境の変化が原因で認知症の症状が加速した事例

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認知症の患者さんが、「ご飯まだ?」「ご飯早く出して」などと訴える事例は良く聞きますし、私も介護職員として多く経験しています。
今まで全くそんな事を言わなかった施設入所者が突然そのような事を言うようになった事例を紹介します。

発熱、3日間の静養から

Mさん(女性、80歳)は、特別養護老人ホームの4人部屋に入所しています。
アルツハイマー型認知症ですが、症状が軽く、問題行動といわれる行動もなく、スタッフとの会話もごく普通にされていました。
変形性膝関節症を患っており移動には車いすを使用していますが、自力で移動することができます。
そんなMさんが、ある時38度台の熱を出しました。
感染症の有無もまだ分からない初期の段階で、いつもの4人部屋ではなく、医務室の隣に設けられた静養室にて点滴等の処置が行なわれました。
熱は1日~2日ほどで下がり、感染の心配もないという事で、3日間静養室で過ごした後、4人部屋へと戻りました。
食事の時間になると、Mさんは自ら車いすをこいで、ホールに移動してきます。
いつものようにホールに来て夕食を食べたのですが、なぜかこの日は、食後にスタッフを自分のところへ手招きして呼び、こう言いました。
「ちょっと…ここは日に1回しかご飯でないの?」
認知症とは分かっていても、「Mさんはそんなこと言わない」という固定観念からスタッフは「何を言っているの、Mさん?今のが今日3回目の食事でしたよ?」と返してしまいました。
するとMさんは「他の人たちは、朝も昼もご飯が出たの?私は1回しか出されてない」と返し少し興奮した様子でした。

対応は、介護者として基本的な事を行うだけ

何度も「今日は1回しか食べていない」と訴えるMさんに、別のスタッフが一緒に部屋に戻り、ゆっくり話を聞く事にしました。
食べていないという訴えを否定せず、スタッフから「今日は何かの手違いでそうなってしまったんだね。ごめんなさいね。明日からは、間違いなく3回食事が出るようにしますね」となだめ、お詫びに小さなお菓子を差し上げると、Mさんは落ち着きました。
それでも、やはりMさんは、毎日のように「ご飯は?」「まだご飯でないの?」と、訴えるようになりました。
施設内に同じような事を訴える入所者は他にも数名いましたが、症状が出始めたMさんに関しては、スタッフは交代勤務なので、まだその事を知らないスタッフもいました。
カンファレンスで対応を統一し、スタッフが目を通す連絡事項に記載しました。
統一した対応は「訴えを否定しない」という単純で基本的な事と、その時の状況により「少量のおやつやお茶を出し、気を紛らわせる」「スタッフが忙しくてもできるだけ手を止め、ゆっくり話を聞くということ」など、特別な事ではなく、人としてあるべき事を雑にせず、再確認するというようなものでした。

「ご飯はまだ?」本当の目的は他にも

他にも数名いる「ご飯は…」と訴える入所者へも、同じ事が言えます。
何度も訴えているのに忙しく動くスタッフは、目も合わせず「もう少しで夕食なので待っててくださーい!」とだけ伝えその場を去るという、入所者にとってはなんとも寂しい状況が当たり前のように行なわれていました。
Mさんの症状の変化によって、入所者への対応について再確認する事ができました。
Mさんのように何度も「ご飯は…」と訴える方は、本当に食べていないと思っているのですから、そのことに対する介護職員の否定は「ただの否定」にすぎません。
在宅で介護されている家族によくみられるのが、「さっき食べたでしょ!」などという言葉です。
家族であるからこそ、「お願いだから、思い出してほしい」という家族の希望が、その言葉に込められていると思います。
しかし、認知症は、ざっくりいうと脳の病気ですから、介護者もその事を受け入れる必要があります。
また、同じことを何度も訴える方は、他にもいろいろな目的があります。
それが「人に話を聞いてほしい」という単純な希望を満たすための手段であることもあります。
ですので、「ご飯まだ」など手ごろですぐ出てくる言葉を発し、人と接点を持ちたいだけなのではないかと、認知症の方と関わっているとそう感じる事がよくあります。

認知症の方でも、もちろん感情はありますから、自分の訴えを聞いてくれなかったり、否定されると、悲しい感情が残ります。
それでまた同じ事を訴え続けるという悪循環に陥ります。
相手がゆっくり自分の話を聞いてくれるだけで、気持ちは落ち着く事が多いです。
発する言葉が「ご飯は…」でも、違う話を引き出してみると、ご飯の事なんか頭から消えてしまう時もあります。

まとめ

今回のMさんは、発熱のため、4人1部屋の自室から、3日間1人の静養室へ変わりました。
認知症の患者さんに、環境を変えるのはよくないとされているので、体調不良と、この環境の変化が重なり、症状の悪化につながったのではという事も考えられました。
感染の事を考えると、やむを得ない対応でしたが、やはりなるべく環境は変えないほうがいいのかなと考えさせられました。

介護職で人手不足は最近よく耳にします。
人手不足により、一人当たりの業務量が増え、本当に忙しい思いをしているという現実があります。
それでも、人の訴えを聞くというだけで、落ち着く認知症患者さんは多くいます。
人の話相手になるというと、よく勘違いし、相手の話を聞かずに自分の話をべらべらと始めてしまう介護者も時々いますが(笑)

大切なのは、相手の話を聞く事だと思います。
目を見てうなづいているだけでも、満足されたりします。

[参考記事]
「傾聴の大切さ。自殺願望を訴える認知症利用者に対する事例」

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