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若年性認知症による暴力行為を止めるには暴力が有効?

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 若年性認知症のAさん(60歳)は、林業をしていた男性です。一級建築士の資格も持ち、毎日朝5時に起きて夜中に帰宅するという、以前はバリバリの働きマンでした。若年性認知症と診断されたのは5年前。奥様にも暴力行為をするようになり、精神的に辛くなった奥様が「もう殺してしまいそうになる」ということで相談に訪れました。

 結婚してからケンカもなく、いつもラブラブな状態で、奥様に手を出したこともありませんでした。それゆえに奥様のショックは強く、最終的にはAさんは老人介護施設に入ることになりました。施設に入れたという自責の念で、面会に来るたびに自分を責めて、泣きながら帰ることも多いです。

若年性認知症のAさんの症状

 Aさんは「ねぇ!」「分かんねぇ!」と言いながら女性職員の髪の毛を掴んでひっぱったり、腕をねじったり、力があるので女性が対応するのは少し危険な状態でした。また、他の利用者を蹴ろうとしたり、腕を掴むので常に職員が側にいないとダメでした。

 そこで奥様に相談し、Aさんには精神安定剤を服用していただきましたが効果はなく、むしろそれに反発するように言動は強くなり、我々は会議を開きました。

若年性認知症のAさんの暴力に対する対応

 まず、Aさんがよく「ねぇ!」「分かんねぇ!」という言葉から判断すると、Aさんには何か大きな喪失感から怒りが来ているのだという分析になり、怒りの時間や静まり方を細かく報告し合いました。

 Aさんは怒りがMAXになった時になだめられたり、怒りを抑圧されると、反発するように怒っている時間も長くなり、強くなりました。そこで、怒っている時にはその怒りを受け止めて、例えばAさんが手を掴んできたら、職員は自分に危害がない範囲で抵抗をして怒りを発散させてあげます。そうこうして、しばらくすると怒りが静まる感じがありました。

 これはすごく効果があり、私たちのリーダーは「なるべく怒りが出た時は怒りを止めるのではなくて、放出させてあげなさい」と男性職員に伝え、私たちはAさんに掴まれても軽く戦うようになりました。ただし女性職員はケガをする場合があるので、怒りが弱い時だけ関わるようにしました。

 怒るタイミングとしては朝起きた時とおやつ時~夕食前にかけて、怒りのMAXが来ていることも分かるようになりました。その夕食前に職員と戦い、ある程度怒りが発散できると、落ち着いて眠れますが、怒りを止められると夜も興奮して眠れなくなっていました。

若年性認知症のAさんの喪失感

 またAさんが大きな喪失感を持っていることを念頭に置いて、なるべくAさんの横には職員が付き添ったり、話をしてあげるようにしました。職員がAさんの腕や肩、頭をマッサージしてあげると怒って「やめろ!」「やれ!」など言いますが、抵抗はせず、少しリラックスしている様に見えました。

 その後、他の職員と廊下を歩くときに、少し笑顔で指を職員に向かって指したりおどける様子が見れました。Aさんは1日の中で笑うことはほとんどないのですが、これは大きな進歩といえるでしょう。

若年性認知症のAさんの暴力行為は音から?

 Aさんは音にすごく反応して誰かの笑い声や歌声に「うるせぇ!」と眠っていても反応します。そこでAさんには騒がしいユニットから静かな別のユニットに移ってもらいました。静かな環境でご飯を食べる時には「やめろ!」などと言って手を掴んだりしますが、おにぎりを口に持っていくとちゃんと食べるし、飲み物も飲みます。こういう環境下では怒っているように見えても、食べ物は拒否せず食べてくれるのです。

まとめ

 私たちの施設ではAさんに対してなるべく自由に怒りを発散させて対応しています。他の施設に比べて私の施設は自由度が高いかもしれませんが、自由に発散させてあげるのも対処法だと思います。それによって「ねぇ!分かんねえ!」という言葉が多かったのに、「当たり前じゃ」や「何がや」など別の言葉を聞くことが出来て、Aさんの心情にも少なからず影響があると思いました。

[参考記事]
「入浴介助中に暴力を振るう認知症の人に対する対応事例」

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