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[認知症介護の実例]個々に合った排泄ケアで失禁が減る

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Mさん(76歳・男性)は、10年ほど前に多発性脳梗塞を起こし軽度の右麻痺が残りました。
奥様と二人暮らしでしたが、リハビリの成果もあり、入浴での浴槽の出入りや更衣の際のボタンを止めたりなど多少の介助は要するものの、日常生活をおくるにはさほど問題はありませんでした。
若い頃は漁師をしていたMさんは、寡黙でもともとあまり人付き合いが得意ではありませんでした。
漁師を引退して脳梗塞を発症し、軽度の後遺症が残ったことで更にMさんは家に引きこもりがちになっていったそうです。
それから徐々に悪化し、うつ症状が出始め、失禁した衣類が箪笥(タンス)から出てきたり、食事をしたことを忘れて奥様に何度も催促するようになりました。
また、失禁する回数が増えて奥様が手伝おうとしますが、強い介護拒否があり、心身ともに疲れきってしまった奥様は施設入所を検討されたのでした。

尿失禁や便失禁が続く

特別養護老人ホームへの入所当初は、慣れない環境で人付き合いも苦手なこともあり、とにかく怒りっぽく、職員に対しての介護拒否も強くありました。
私たちはとにかく施設での生活に慣れて頂くことを最優先と考え、毎日スタッフが挨拶のお声かけをすることから始めました。

スタッフはユニットの固定スタッフですので、次第に顔馴染みの関係になっていきます。
初めは「Mさんおはようございます!今日は久しぶりに晴れましたね。」というスタッフの声かけに対し、「うん」もしくは片手をあげて返事を返すだけでしたが、徐々に「ああ、あんたね。おはよう」と少しずつ馴染みの職員に対して口数も増えていき介護拒否も少なくなりました。

一方、尿失禁や便失禁は続いており、オムツから漏れて更衣が必要なこともしばしばありました。
Mさんは四人部屋で、部屋の隅に1つトイレがありますが、今までトイレを気にされるそぶりはありませんでした。

尿失禁や便失禁に対する対応

私たちは、Mさんは認知症が進行し、尿意や便意がなくなってしまったのだと思い込んでいました。
しかし、ある時部屋の前を一緒に歩いていると、たまたま同室の方がトイレから出るところでした。
それを見たMさん、「ああ、ここがトイレね」と言われたのです。
その言葉を聞いてハッとした私はすかさずトイレに誘ってみました。
すると「行っとこうかね」とすんなりトイレで排尿されたのです。
まさに目から鱗の出来事でした。

M さんは決して尿意や便意がなくなったり、排泄機能が低下したわけではありませんでした。
私たち介護スタッフは、あらゆる可能性を考えながら、その方の残存機能をしっかり保持していけるようにサポートしていかなくてはなりません。

そこで私たちは、視覚で理解出来るように大きな赤文字で矢印をかき、分かりやすく便所という張り紙をしました。
また、Mさんの目線の高さに合うように調整もしました。
そして同室の方にもお願いし、すぐに見て理解できるようにトイレのドアは常時開放しておきます。

また、夜間帯はベッド横にポータブルトイレを設置し、睡眠を妨げない程度の小さいライトをポータブルトイレの足元に設置し、気付きやすいようにしました。
足元には転倒のリスクを考えてセンサー(マットセンサー)を設置し、万が一倒れても分かる体制を取りました

また、日中にトイレに行った時に既に失禁していた場合は、自分で処理できるように見える所に大きなゴミ箱を設置し、そして新しいオムツをトイレのカゴに数枚入れておきました。
ズボンの脱ぎ履きはご自分でできるので、こうすることで人の手を借りずにMさんは遠慮なくトイレに行くことが出来ます。

初めはトイレの前を通る度に声かけしていましたが、徐々に習慣化していくことで場所を覚えられ、ご自分で行かれることも増えてきました。

失禁が減り不快感が軽減することで次第に穏やかな表情になっていったMさん。
相変わらずお一人でゆっくりされることが好きでよく部屋で過ごされますが、たまにリビングにコーヒーをのみに出て来られたり、顔馴染みのスタッフと雑談をされたりと以前よりゆったりと過ごされるようになりました。

[参考記事]
「[認知症介護]生きがいを見つけたことで排泄ケアが上手くいった例」

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