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認知症高齢者への音楽療法の効果。ピアニストを呼んで演奏会

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これまでの経緯

Kさんは60歳代の女性で、私が特別養護老人ホームの職員へ移動が命じられた際は、既に入所されている方でした。
私が配属されたフロアは、特別養護老人ホーム内でも重度の認知症の方ばかりが集められている、いわゆる重度認知症フロアで、そこの介護職員としての勤務が組まれました。
Kさんはこのフロアで生活される人ですが、その中でも比較的軽度の認知症レベルで、日常生活のほとんどをお1人で対処することが可能でした。

月に2回の音楽療法

私が勤務する特別養護老人ホームでは、音楽療法として、1人のピアニストが隔週で施設を訪問してくださり、クラシックの演奏や懐メロなど、自らも歌いながらピアノの演奏会を開いてくれるのです。
Kさんは、この演奏会をとても楽しみにしており、演奏会が始まるとKさんは手拍子をし、時には一緒に歌を口ずさみ、30分程度の演奏会を楽しまれます。
Kさんの他にも、そのフロアに在籍する認知症の高齢者が一緒に演奏会を楽しむのですが、ピアノの音色や歌声が耳に届かないのか、ある一点を見つめたままの方や座っているソファーのしわを一生懸命に伸ばそうとしている方など、認知症高齢者特有の行動が各所で見られます。
あるとき、そのピアニストの方に、Kさんを除いてほとんど無反応な演奏会であったため、「認知症の方ばかりなので申し訳ありません」と謝意を伝えると、「拍手のない演奏会でもいいのです。きっと何かが伝わるはずですから」と返答されました。

音楽療法の効果

「きっと何かが伝わる」というピアニストの言葉を解釈しようと、私は、演奏前と後の認知症高齢者の行動の違いについて注意深く見守ることにしました。
Kさんを含め共通することは、ピアノ演奏が始まる前までは、徘徊する人やトイレに頻回に行く人、テーブルをコツコツ叩く人など、落ち着きなく過ごされていた人たちも、ピアノ演奏が始まると、徘徊や頻回だったトイレへの訴えがなくなり、約30分の演奏を手拍子や共に歌うことはありませんが、落ち着いた行動をとられているように感じました。
Kさんは、特に表情が明るくなり、演奏会終了後についても鼻歌を歌うなど、気分が高揚している様子がうかがえます。

音楽療法をきっかけとして

認知症高齢者への音楽療法をきっかけに気づいたことは、施設の介護職員など、どんなに真摯的な態度で介護にあたったとしても、拍手のない演奏会のように、重度の認知症高齢者からは「ありがとう」などの感謝の言葉を伝えられることはほとんどありません。
しかし、重度の認知症の高齢者が、徘徊などの問題行動を発症せず、落ち着いて生活することができた場合、それが介護者にとっての最高の感謝の表現であり、認知症高齢者の最大限の表現であるといえます。
対して、徘徊などのいわゆる問題行動といわれる行為が確認できる状況であるならば、介護の手法が間違っている場合や、環境の整備などの整え方に誤りが生じているものと推測することができます。

[参考記事]
「認知症に対する非薬物療法(回想法、バリデーション、RO)について」

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