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認知症による帰宅願望から徘徊(行方不明)へ発展した事例

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 私はショートステイ併設型の特別養護老人ホームで働いています。そのショートステイを初めて利用することになった、帰宅願望のある女性の利用者Aさんのお話をします。

日常的に帰宅願望があり対応に困っていた

 入所してすぐに落ち着きがなくなり、「家に帰らして!」という帰宅願望が激しくありました。しかも、その時は感情的になり周囲の人の話を聞き入れることができない状態でした。

 日中から、廊下や他の利用者の居室を歩き回り、介護職員は常に見守りが一人付いている状態でした。夜間も十分な睡眠をとることなく、常に施設内を歩き回り、疲れては一人で椅子に座って休むことを繰り返していました。

とうとう無断外出してしまう

 そんなある日、私が夜勤として勤務することになったのです。深夜の業務は無事に終えて朝を迎えました。当時の夜勤は、利用者55名を2名でお世話していましたので、朝方は慌しく動き回っていました。

 そんな中、利用者Aさんの所在を確認すると、どこにも見当たらないのです。私はパニックになり、すぐにもう一人の夜勤者の先輩に報告しました。先輩が玄関の方に行くと、扉が開いていたのです。その原因は私が、新聞を施設の中に入れた時に鍵をするのを忘れていたからです。

 確実に外に出たことが分かると、もう、夜勤者2人の手に負えません。すぐに近隣の職員に電話連絡して応援を要請しました。施設内を留守にするわけにはいかないので、先輩は残り、私は外に出て探しに行きました。時間にして15分ぐらい探しましたが、どこにも見当たりません。そうしているうちに近所に住む職員が応援に来てくれて、一緒に探しました。5分、10分と時間が経つにつれて職員がどんどん応援にやってきて、私は先輩の指示で施設内に待機をすることにしたのです。

 すると、施設から出たと思われる時間から45分が経過したぐらいに、ある職員が施設近くのバラ園で発見してくれたのです。見つかった瞬間、涙が止まりませんでした。その利用者Aさんは、すこし擦り傷がありましたが大事には至りませんでした。

 認知症の症状として徘徊し、その後帰宅することができず行方不明になることは珍しくありません。年間では1万人以上の認知症の高齢者が徘徊により行方不明になっていて、そのうち、数百人が見つからないままです。中には亡くなってしまう人もいます。今回は一般家庭でなく介護のプロの集団が集まる施設での出来事でした。日頃から「家に帰りたいと」という帰宅願望があるにも関わらず、私達はその気持ちを紛らわすことだけを考えていました。

帰宅願望からくる徘徊への対応

 今回のことがきっかけで、この利用者Aさんに対して、日中に限り、外への外出の際に職員もついて行くようにしたのです(夜は危険が増すので、外出はできません)。もちろん家族さんの許可を得ての対応でした。

 玄関を出ると、なんとか自分の思う場所にたどり着くように一生懸命外を歩くのです。信号や踏み切りもあり心配なところもありました。実際に職員も同行して思ったのですが、体力的な事と膝が痛い事があり、実際には15分も歩くことができず、すぐ休憩をするのです。その後は自力で帰ることができないので、施設に待機する職員に車で迎えに来てもらったのです。

 夜間は、日中歩くことに疲れるのか、帰宅願望や徘徊もなく、ぐっすり眠るようになったのです。認知症が影響して無断外出する利用者に対しては、ついつい施設内のみで過ごしてもらうことを考えてしまっていました。しかし、それでは根本的な解決策にはならないのです。今回のようにその行動そのものに目を向けて、職員がそれに向き合うことが最も近い解決策になることを知りました。

[参考記事]
「認知症による夜間徘徊の原因とそれに対する対応事例」

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