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ご飯を食べてないと何回も言う認知症の人への対応

 

 今回は「まだご飯を食べてない」という認知症による症状が大きな出来事に発展してしまった事例をお話します。

 Bさん(77歳)はアルツハイマー型認知症と診断されています。食事や入浴や排せつなどの基本的な生活動作においては特に問題なく出来ていますが、数分前にしたことを覚えていなことが多くそれが原因でトラブルになってしまうケースが多々発生しています。

 Bさんは入居される前は息子夫婦と一緒に同居されていましたが認知症と診断されて以降、ご飯を食べたのに「ご飯まだ」「お腹すいた」と何度も言われることがあり、その都度先ほど食べたことを説明していました。

 最初のうちは「そうだった?」と自分が勘違いしていると思ったのかそれ以降は言わなくなったのですが、認知症が進行するにつれて状況が悪化してしまったのです。

 「あたしを殺す気か」「あたしが邪魔なんだね」と大声で怒鳴りつけるようになり、日課で散歩に出かけていたBさんは外に出て色々な方に「ご飯を食べさせてもらえない」「息子はあたしを殺そうとしている」などを言いふらしました。

 Bさんは認知症ではありますが歩行や会話などに違和感は殆どなく少し物忘れがあるかな程度でハキハキしゃべられるために、周りの人はBさんの言葉を全て信じてしまったのです。

 それにより、近所の方が警察に虐待通報してしまい、実際に自宅に警察が来る事態になってしまったのです。誤解は直ぐに解くことが出来ましたが、近所の方へは色々なところに噂として流れてしまい外を歩いていてもヒソヒソと何かを言われている感じがしていたそうです。

 誤解は解けてもBさんの行動が治るはずはなく、息子さんの奥さんが一緒に暮らせないと言い、一時は離婚まで考えていたそうです。それにより特別養護老人ホームに入居することとなったのです。

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本当に覚えていない

 Bさんは別に意地悪や嫌がらせでそういった行動に出ているわけではありません。本当にご飯を食べたことを覚えていないのです。さらにはお腹も満腹感を感じることが出来にくくなっており、まだ食べてないと思ってしまうのです。

 ご自宅で過ごされていた時はご家族の認知症に対する理解ができていなくて、入居後に説明したときには「数分前に食べたから流石に覚えていると思いました。ですので意地悪で言っているのだと思った」と言われました。確かに認知症について知らなければそう思っても不思議ではないでしょう。

否定は逆効果

 先ほどもご説明した通り、Bさんはご飯を食べたことを覚えていないのです。覚えていないのに「ご飯は食べたでしょう」と言われても「食べてない」「どうして食べさせてくれないの?」と思ってしまいます。

 それはやがて介助者に対する嫌悪感に変わってしまいます。その結果、ご家庭ではご近所さんへ食べさせてくれない事を言って回る結果になったのです。

 Bさんは嫌がらせで近所の人に言いふらしている訳ではありません。本当にお腹が空いていると思ってしまい、助けを求めていたのです。

 つまり「ご飯は食べたでしょう」と否定的な声掛けを行なっても何も解決はしません。どんな症状であろうと、認知症の人に対する否定的な声掛けは逆効果を生みます。

食事の回数を増やす

 ご飯を食べたいと言っているのだから食べて貰ったらいいのです。ただ丸々一食分を食べてしまうと太ってしまいます。

 そこで施設では一日三食としていますがBさんの場合のみ一回当たりのご飯の量を半分程度にして一日最大で6回食事の時間を設ける事にしました。

 Bさんも常に食事の後に「ご飯まだ」と言ってくるわけではありません。言われた場合のみ食べてもらい、最終的に夕食時に一日に必要な摂取量分のご飯を食べてもらうようにしました。

 それでも「食べていない」と言われる場合はカロリーゼロや塩分の少ないお菓子などを食べてもらう方法を取っています。

 認知症の本人が変わることが難しいのであれば介助者が変わらなくてはなりません。

[参考記事]
「認知症の人が水分を摂取しない時にはゼリーが最適」

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