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認知症介護 宮野さん編②電話のかけ方が分からなくなった母

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認知症の症状のひとつとして、不眠や眠りが浅い、昼夜逆転といった「睡眠障害」があります。
母の場合、60代半ばになった頃から不眠の傾向が強くなってきました。
深夜まで寝つけず、わずかに睡眠をとった後、午前2~3時には起きだしてしまうのです。
足りない睡眠時間は、昼間うとうとすることで補っていましたから、昼夜逆転のケースにも該当するかもしれません。
趣味や娯楽に関心を示さなくなり、何をするでもなくぼんやりと過ごすことの多くなってきた母ですが、ひとつだけ捨て去っていないことがありました。

電話です。

同世代の友人はもちろん、コンビニに通っている間に親しくなったというレジのバイト女性など、さまざまな人に電話してグチを聞いてもらうのが母のストレス発散法でした。
ベッドに横たわりながら、母は長々と携帯で話続けていました。
家族だからこそ言いにくいこともあるでしょう。
グチでも何でも自由に話せることは、母のメンタルに好影響を及ぼすはずです。
私はむしろ長電話を歓迎していました。
少なくとも日中は。

睡眠障害が悪化し、夜半に目を覚ますことが当たり前となってからは、電話がトラブルのもとになったのです。
目を覚ますといっても、すっきりした覚醒ではありません。
母の場合、自分がどこにいるのか、何時なのか分からない状態がしばしばでした。
単に寝ぼけているのではなく、時間や場所の感覚がなくなってしまう「見当識障害」だったのでしょう(参考記事「認知症の中核症状って一体どんな症状なの?」)。
午前5時を夕方の5時と勘違いして、「晩ごはんを買いにいく」とスーパーに出かけようとしたこともありました。
深夜から明け方に活動を始めるので、普通の生活サイクルで過ごしている家族には大きな負担でした。

間違い電話の相手と打ち解ける

目が覚めても時間がよく分からない。
場所もよく分からない。
そんな不安から逃れようと、母はまず家族に声をかけるより、電話を優先しました。
日中なら携帯のメモリーから、かけたい相手を選ぶ操作ができます。
真夜中に覚醒した母は混乱しており、同じ操作ができません。
最も基本的なプッシュボタンを押してかけようとするのです。

ただし、押した番号はうろ覚え。
似たような番号の他人であったり、でたらめな文字列だったり、時には119番や110番だったりします。
母の携帯の発信履歴に並んだ、「0333」「35261」といった、つながるはずもない文字列を見てがく然としました。
自分に苛立っていたのでしょう、1分に1回くらいのペースで何十回もプッシュしていました。

迷惑をかけるからと、携帯を取り上げようとすると母は激しく抵抗します。
せめて夜間だけは預からせてくれといっても拒否されました。
携帯は母にとって唯一のストレス解消法。
もはや命の次くらいに大切な依存の対象となっていたのです。

間違い電話をかけてしまった方々には本当に申し訳なく思っています。

ある知人と番号がよく似ているため、毎晩のように間違い電話をかけてしまう方もいました。
相手もすっかり母からの電話に慣れてしまい、ついには「おお、またあんたか」と気軽に返事をしてくれるようになったとか。
今ではほんの少し笑える話になりましたが、当時の私はいつ警察沙汰になるかとハラハラでした。

何度も携帯の機種変更を求める母

さらに症状が進んでくると、もはやプッシュボタンを押すことも容易でなくなってきました。
暗い中で光るLEDの表示が見えづらく、ボタンを押しにくいと訴えるのです。
「もっと見やすいボタンの機種に変えろ」と命じられ、ユニバーサルデザインのシンプルでプッシュボタンの大きな機種を用意しましたが、夜中の母には扱えませんでした。「こんなチャチな電話じゃだめだ」と憤慨されました。
母の目には高齢者にも扱いやすいシンプルなデザイン=おもちゃのようでチャチ、と映ったようです。

代わりにパンフレットを指さしたのは、小さなキーボードまでついた高機能なモデル…。
使えるはずがないと説得しましたが、かんしゃくを起こすだけです。
仕方なくまた機種変更しました(機種代、通話料がかさみ当時は電話代の支払いが大変でした)。
もちろんこの最新モデルも扱えませんでした。

そもそも母には、目が覚めたらまず部屋の明かりをつけて、きちんと頭を整理するということすら思いつくことができず、暗がりの中でやみくもにプッシュボタンを押すだけだったのです。

しっかり夜眠ってもらうため、心療内科で睡眠導入剤をもらうことになりました。
医者嫌いの母もさずがに眠れない生活には困っていたらしく、この時だけは素直に従ってくれました。

睡眠導入剤を飲んでからは夜に起きだして電話をすることは減りましたが、睡眠薬の長期多用は認知機能に影響を及ぼすという研究もあることから、少し不安はありました。

こっちの症状が収まれば、他の違う症状が出てくるという薬の副作用を考えると本当に服薬の判断は難しいです。

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