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軽度認知症による物盗られ妄想を解消する3つの対応策

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Aさん(女性、90代)は、月に2回ほどショートステイをご利用されるお客様で、介護度2で軽度の認知症です。
歩行は安定しており、シルバーカーを使用しています。
軽度認知症とされていますが、頭の回転が速く、社交的でとても職員を気遣って下さる優しい方です。

Aさんの強いこだわり

毎回2泊3日ほどショートステイをご利用されますが、毎回荷物を多く持ってやって来ます。
とてもおしゃれな方で洋服がボストンバック3個に目いっぱい詰まっています。
職員が毎回持参した荷物の確認をするのですが、その対応は大仕事です。
また、お風呂である事を伝えると「強い拒否」があります。
毎回なんとか説得し、お風呂場に行って頂きますが、入浴が始まると問題なく入ってくれます。

急遽のショートステイで思いもしない出来事が

ある日、Aさんは都合により急遽ショートステイを利用することとなりました。
Aさんにとっても急な出来事でしたので、荷物はボストンバック1個と最小限で来られました。
いつもどおりに過ごしていたAさんでしたが、次の日の朝「私の荷物がなくなった」と職員に話をしてきました。
詳しく話を聞くと「〇〇と〇〇がない」と具体的に無くなった物を教えてくれました。
しかし、初日に職員が荷物を確認したときから荷物の中には、その物はありませんでした。
Aさんに持ってきていないという事を説明しましたが、「いつも持ってきているのだから今回もあるのよ!」と話され、最後は「誰かが盗んだ」といい(物盗られ妄想)、そう思い込んでしまいました。
その後は「もう帰りたい!また盗まれたら困ります」と帰宅願望が強く出るようになりました。
そんなことがあってからは帰るまで自分の荷物をシルバーカーに乗せ、肌身離さず所持されていました。

Aさんの変化

それからはショートステイ利用時に持っていくる荷物は少なくなりましたが、施設の中ではいつも荷物をシルバーカーに積んでいます。
以前は日中、他のお客様と広場で楽しく過ごされていましたが、居室に一人で過ごされる時間が増えました。
入浴の拒否も強くなり、夜は毎日スタッフルームへ行き「私は帰りたいです。いつ帰れますか?」と尋ねます。
職員の中には「不穏がある」「認知症が進んできたのか」と思った人もいたようです。

職員の気づき

ある日、職員同士で「Aさんはおしゃれだけど大量の服を持ってくるのはどうしてだろう」と話していると「その日の気分で選びたいのではないですか?」という意見がありました。
そこで私たちはある仮説を立てました。
その日に着たい服を着たい→持ってきていなければ着られないので不安になる→持って来ればその心配はない→大量に服を持ってくる。
この「無ければ不安」という事に注目してみました。

立てた仮説を紐解いたら見えてきたこと

入浴の際は職員がご利用者様から洋服をお預かりし、浴室に保管します。
いわばその時間は「自分の手元にない=不安になる」状況です。
これはAさんにとって「持ってきたはずなのにない」のと同じ事です。
また、その時に着たい服が用意されている物と違う可能性があります。
現に入浴を拒否する際、保管している服を見せますと「いいです。服も着替えましたから」、脱衣所でも「洗濯しなくていいです。私はこれが着たいのだから」と強い口調で言われます。
これは着たい服が無いことで不安になる良い例です。
荷物を持ち歩く行動や日中、居室にこもられるのも「荷物がなくなるかもしれない不安」の表れなのではと考えるとおかしくありません。
まとめますと、「無ければ不安」なのは以下の3つです。
〇服が自分の手元に無い
〇着たい服が無い
〇部屋から荷物が無くなる

不安を無くすために行った3つの対応策

私たちはAさんの「なければ、なくなったら不安」を少しでも解消したいと3つの対応策を実践しました。
一つ目は【荷物の確認の仕方を変える】
今までは大荷物だった為、荷物をお預かりし、Aさんがいる部屋とは別の部屋で職員だけで確認作業を行っていましたが、「今回は荷物が少ないからここで一緒に確認しましょう」といいAさんの目の前で確認し、荷物を居室に運ぶ際も「居室を案内します」といい、一緒に居室まで来てもらい、Aさんが指定した場所に荷物を置くようにしました。

二つ目は【荷物が隠れる場所を作る】
居室の入口からは見えない所をAさんに「ここなら荷物を置いても誰からも見えません」と一緒に見て確認しながら荷物を置く場所を作りました。

三つ目は【入浴準備の仕方を変える】
今までは入浴後の洋服は職員が前日に用意していましたが、その準備を止め「明日はお風呂なので洋服を準備しておいてください」と声かけのみにしました。
また、入浴前に「これからお風呂なので洋服を持ってきてください」とご自身で用意して頂くようにしました。

実践した結果

実践後、うれしい変化がありました。
【荷物の確認の仕方を変えた】ことで持ち物の把握ができ、「物がなくなった。盗まれた」と言われる事もなくなりました。

【荷物が隠れる場所を作った】ことで「誰かに盗まれるかもしれない」という不安がなくなったのか、荷物を持ち歩く行動がなくなりました。
また、居室にこもらず、今までにも増して積極的に広場に出てくるようになりました。

【入浴準備の仕方を変えた】ことで入浴の際の拒否が少なくなり、しっかりと好きな洋服を用意されてきます。(元々入浴は好きじゃないようですが)

最後に

介護の現場では常日ごろ色々な変化があります。
今回Aさんは軽度の認知があった為、最初は認知症が進んで不穏になり「盗まれた」「帰りたい」などの行動があると考えていた職員も少なくありません。
それが自分たちの家族や身近な高齢者に起きた出来事だったら、認知症状の変化の可能性の前に不安や嫌悪感があるのだと考えるはずです。
施設に入所しても、認知症であっても
人であり、感情があるのは当たり前です。
しかし、介護の現場に一歩入ると介護知識も増えると同時に不思議と「なにかの疾患か認知症」があるのではというフィルターがかかってしまいます。
そんなフィルターを外し、まずは人の気持ち、本質を常に捉えれる介護職員でありたいと思いました。

[参考記事]
「物盗られ妄想の認知症高齢者の実例。ヘルパーに疑いをかける」

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