認知症の人を介護(ケア)する時には最低限押さえておかなければいけない事項があります。それをこれからお話ししていきます。
認知症の人の性格・生活歴・趣味嗜好等の把握をする事
認知症の人の家族に本人の趣味・嗜好・性格・生活歴を尋ねた時に全てを答えられる事は稀です。中には、職種しか返ってこず、他の趣味などの事柄は全く分からなかったケースもあります。
なぜ、このような事柄を把握する必要があるのか。それは何も知らないと認知症の人の行動パターンが分からないからです。本人の生活歴などを知ると何か問題行動を起こしたときに「〇〇な理由でこんなことをしたのね」と分かる場合があります。介護をする人にとっても、理由が分かった方が納得がいくから、気持ちが幾分か楽になります。
例えば認知症になる前に本人が「この家には自分の居場所がない」と思っていたとします。家族との不仲や長年暮らしていた家から引っ越したなど理由は色々あります。そうすると認知症になってから、「ここは自分の居場所はないから出ていく」という行為に繋がっていく可能性があるわけです。
昔住んでいた家に帰るために歩いているうちに迷子になり、警察に保護されることもありますが、これは一般的には「徘徊」と呼ばれています。本人にとってはこのように理由があるのです。
もう一つ例を挙げます。家が貧しくて、長い間3食の内1食しか食べられていなかった人がいるとします。こういう生活により絶えず「お腹が空いた」と思っていた場合、認知症になってから、「(食事をしたのに)まだご飯を食べてない」と言ったり、ティッシュなどの物を食べようとする異食行為に繋がっている可能性があります。
これらの行動は周囲から見ると不可解でも本人から見ると重大事です。それなのに周囲から止められたり否定されたりするとどのような反応を示すでしょうか。私の約8年間の介護職員としての経験上をお話しすると、余計にBPSD(周辺症状)を増悪させるか、一時的に表面上治まっても本人が納得していないので後々、繰り返す事が多いです。また、人によっては進行具合を速める事に繋がります。
このように生活歴などはBPSD(周辺症状)の発現に関わりがある訳ですので、家族の基本情報は詳しく知っておくことをお勧めします。
真っ白な状態で接する
認知症の人の行動を理解する時に、自分の物差しで「物事はこうあるべき」「普通はこうする」というステレオタイプな見方で接すると、介護する人に精神的な負担がかかり、その負担から虐待などの不適切な関わり方をしてしまう恐れがあります。
例えば「〇〇でしょ。何でお母さん(お父さん)分からないのよ」となり、最終的には暴力に繋がりかねません。正確に言うと恐れがあるというよりも、悪循環に陥るのは時間の問題というのが家族からのヒアリングで感じることが多いです(介護福祉士としての経験上ですが)。
上記から見えてくる認知症の人の介護(ケア)をする上で気を付ける事は、相手を理解する事・寄り添う・共感するという事です。間違っても否定・禁止・命令はしないで下さいね。「それ違うでしょ。〇〇しなさいよ」などと決して言わないようにしてください。
文章で見れば簡単に見えても、いざ実践するとなるといきなりは少し難しいでしょう。少しずつでも近づけていくだけでも、価値ある事だと思うので是非取り入れてみて下さいね。
[参考記事]
「認知症の周辺症状ってどんな症状なの?」