Nさんは旦那さんを亡くしてから一人で生活をしていました。自宅の隣に娘様が住んでいた為、娘様に協力してもらったり訪問ヘルパーを利用しながら過ごされていましたが、夜トイレに行く際に転倒してしまい、右足を骨折されてしまいました。
入院中に手術を行い、歩行は可能になりましたが入院生活が長かったせいか、「せん妄」が発生するようになり食欲もなくなってしまいました。
娘様も高齢で足が不自由になってしまった為、ケアマネジャーに相談し、介護付き有料老人ホームに入居する事になりました。
せん妄とは「一時的に認知症と似た症状が現れること」です。
症状としては
①何かに集中することが出来なくなり、気が逸れてしまう。
例えば集中力がないために、相手の話を聞いて、言葉を返すことが出来なくなる。つまり、まともな会話が成立しない。②記憶障害、見当識障害、言語障害、失行、心理症状、知覚障害などの症状がある。
入居後の状態は
入居時には下肢筋力低下により、歩行が不可能になってしまった為車いすの生活となりました。
認知症の症状も進んでいて、あまり話す事もなく、食事なども介助を行ないながらなんとか食べてもらえるような状態です。介助は必要ですが、ホーム内であれば特別問題ない様子でです。
せん妄が発生
入居して数日してから、夕方くらいになると大きな声で「誰かー」「助けてー」等と叫ぶようになってしまいました。ベッドで横になっている時にも誰かと話をしていたりとせん妄の症状が見られました。
普段ほとんど話をしないのに、必ず夕方になると不穏の状態になってしまいます。特に夜間帯にはずっと大声で叫んでいる事もありました。
職員が何度も隣の部屋に迷惑になるので止めるよう話をしても、まったく効果がありません。その状態が朝まで続く事もありました。朝まで続いてしまうと、今度は日中寝てしまう為、食事や水分補給がしっかりとれず、悪循環が続いてしまいます。
こんな状態が続くと、体調不良や他の入居者への被害がでてしまうのではないかと、職員はNさんの夜間帯の状況について話し合いを行いました。
解決方法について
とにかく夜休んでもらい、朝しっかり起きて食事を食べてもらう為に、まずはかかりつけの医師に相談しました。
現在飲んでいる内服薬を確認してもらい、寝る前の薬として眠剤と精神的落ち着く薬を処方してもらう事になりました。
服用するようになってからは、眠る事が出来るようにはなってきました。しかし覚醒時間が早く、深夜の2時や3時に起きてしまう事がありました。そうするとそこから大きな声で騒いでしまいます。
そこで職員はフロアで対応するようにしました。テレビを付けたりする事は他の入居者の方がまだ眠っている為出来ませんが、温かい飲み物を入れて、本や雑誌などを渡すと静かに飲み物を飲みながら過ごされます。
その後眠そうにしていたら再度居室のベッドで休んで頂いたり、しっかり起きている時にはそのまま朝を待ち、朝食を食べてもらうようにしました。
朝食後には一度ベッドで休んで頂き、昼食時に起こして対応する方法にした所、この方法がうまくいき、食事や水分も出来るようになってきたのです。
せん妄状態になる原因もある
その後気付いたのですが、Nさんがせん妄状態になるのは居室にいる時が非常に多く、フロアで過ごしている時はあまりその症状は見られなかったのです。
せん妄状態になりやすい状況がわかったので、状態がひどい時にはいったん起きてもらい居室から出る事が解決策になりました。
そうすれば大きい声を出したりする事もないので、他の入居者迷惑がかかる事もありませんし、フロアで眠そうにしていたら居室にお連れして休んで頂く事でNさん自身も休むことができました。
[参考記事]
「認知症による夜間せん妄(幻覚や暴力)がある方への対応」