介護実習で出会ったMさんは、特別養護老人ホームに入所している70代の女性です。私が実習で会った際は自立歩行が可能で、片耳が難聴でしたが、人と喋るのが好きで明るい方でした。他利用者とも仲がよく、輪に入りにくい人には積極的に声をかけるなどの様子がみられました。
血管性認知症で人の名前を覚えるのが苦手でしたが、介護実習性に対しても理解があり、施設に関することなどをよく教えてくださいました。
Mさんの認知症での症状
Mさんは排泄や入浴、着替えの際は介護拒否がありました。それには理由があります。Mさんは数年前に特別養護老人ホームに入所しましたが、その時はほぼ寝たきりの状態で、ベッドをギャッジアップしても座位が不安定な状況にありました。しかし、数年かけて歩行器や杖などを使わず、自立歩行ができるように回復していきました。
介護職員の方から聞くとMさんは入所当時、介護されることに対して罪悪感や後ろめたい気持ちなどがあったそうです。そのため機能回復訓練を積極的に行い、回復していったそうです。そういった経緯があるため、回復した現在でも自分でできることは干渉してほしくない、自分で出来ることは自分でしたいという自尊心に由来する介護拒否であるように感じました。
しかし、介護福祉施設は着替え、排泄、食事、入浴、睡眠時間などはある程度、施設内で決まってしまっており、介護職員もそのペースで援助を行なってしまっているのが現状です。そのため、Mさんの介護拒否は施設のペースに合わせなければならないという生活への窮屈さも原因かと思います。
介護拒否に対する対策
入浴の介護拒否の場合、清拭(体をふくこと)にしていましたが、Mさんはそれも自ら行いたい、その場面を介護職員に見てもらいたくないということで、ご自身に任せて自室で清拭をしてもらうことも多々ありました。
基本的には無理強いはしませんが、
「私(介護職員)と一緒に入りませんか?」
「今日は寒いので少し温まりましょう。」
「服が破れてしまっているので修繕したいのでお風呂場で脱いでくださいませんか?」などあらゆる方面から声掛けを行います。
入浴の際は「入浴」という言葉に反応して拒否されてしまうことがあるので(「入浴」は人にお風呂に入れさせられるというイメージが強いため)、「寒いので温まりにいきましょう。」などの言い回しで誘ったり、「今日は清拭にしましょう。」などの代替案を出すなど、施設内の決まりやペースだけではなく、Mさんに合った対応をしていました。
入浴は週2~3回、その他は清拭を行っていたので、その際に新しい服を用意することで着替えの介護拒否も少なくなっていました。
また、排泄介助も拒否することが多かったので、マッサージをするという名目で腹部のマッサージをして尿意や便意を感じやすくさせ、その流れでトイレへ向かうと排泄介護への拒否が少なくなりました。
排泄に関する介護拒否が見られる場合、部屋などを汚してしまう可能性が高いという理由からおむつを使用するという対応は間違っています。
利用者本人が持っている機能を使ってもらわなければならないので、おむつをしてしまうことで現存機能を失わせる原因にもなってしまいます。
[参考記事]
「[認知症介護の実例]個々に合った排泄ケアで失禁が減る」