認知症の人が入浴を嫌がる場面は時々遭遇します。入浴のメリットは「清潔が保たれ、感染症予防や疾患予防になる・免疫力が上がる・入眠しやすくなること」が挙げられます。入浴しないとこれらのメリットを受けられないので不利益を被るわけです。
では入浴を嫌がる利用者に対して私達介護職員はどのように対応しているかお話します。
時間を空ける
認知症の人が入浴の声掛けを拒否した時はまず、時間を空けます。自分に置き換えて考えると分かりやすいですが、入浴する気分ではない時に「〇〇さん、お風呂に入りましょう。気持ち良いですよ」と言われても、入りたいとは思いませんよね。認知症の人も同じで時間を空けて、場面を変える事(会話や他のことを行なう)で、次に声を掛けた時にすんなり入浴する事はよくあることです。この為、時間を空けてから声を掛けてみるようにします。
入浴しても良いと思える付加価値を付ける
介護者が入浴の声掛けをする時は、相手に入浴してもらいたいから声を掛けていますが、これだと入浴する事についてのメリットが介護者側にしかありません(もちろん、声掛けだけで入浴してくれればそれに越したことはありません)。人に行動してもらうには、メリットを付加した方が行動に移してもらいやすいですので、認知症の人にも入浴するメリットを簡潔に伝えましょう。
私が介護職員になりたての頃に入浴に対し強い拒否があった利用者がいました。ご家族の話によると、その方は若い頃から仕事一筋で普段の楽しみは、家で飲む1杯のビールだったそうです。私たちは入浴していない期間がおよそ3カ月に及んだ時点で施設長の許可を得て、入浴にビールを付ける事にしました。
「アルコールで釣るなんてどうかしている。そんなやり方はケアとは言わない」というご批判もあるかと思います。しかし「施設に入っているから」というのは、アルコールを飲む楽しみを奪われる理由になり得るのでしょうか。施設だからアルコールを飲んではいけない理由を客観的且つ論理的に説明できますか?
説明を出来なければ「施設だから」というのは理由として成立し得ない事になります。昔からの楽しみを人に迷惑を掛けるわけでもないのに奪われている状況の方が、異常だと私は思います。ちなみにこの方は、週に2回程度喜んで入浴されるようになりました。もちろん、アルコールを飲んではいけない持病を持っていれば飲酒は出来ないので、それぞれ認知症の方に合ったメリットを提示してあげてください。
入浴を嫌がる女性利用者が若い男性職員とだったら一緒に入浴してくれると言うのを知り合いの介護士に聞きましたが、これもメリットですよね(笑)女性はいつまで経っても女性なのです。