私が以前介護職をしていた施設はショートステイ専門で、「完全個室であること」と「医療的行為が必要な重度の介護度がある利用者様も引き受ける」ということが特色でした。
そこでAさんという86歳のおばあさんに出会いました。彼女は一見とても穏やかで世話好きで上品な女性でした。しかし、入所時から強い異臭があり、他の利用者様から苦情が来るほどでした。私は介護経験が長いですが、その異臭に呆然としたほどです。
早速職員は入所当日に入浴を勧めますが、入浴が嫌いで浴室へご案内することは容易ではありませんでした。私は違うユニットで働いていたこともあり、1回目の入浴に関わっていませんが、それに携わった職員が「強硬姿勢」で行ったことがさらにAさんの入浴拒否に拍車をかけてしまいました。
入浴してもらう方法を発見する
Aさんは脱衣をする行為を嫌がり、そこが彼女が激昂するポイントでした。男性職員が多少強引気味に脱がせていたので激昂するのは当たり前でしたが、私はそれだけが理由ではないのではないかと感じました。男性(職員)が嫌いなので脱ぎたくないという女性利用者は多くいます。
もちろん寝たきりになってしまうと女性職員だけでは落下の危険が伴いますので男性職員の力を借りることは致し方ないですが(入所者の体重が重い場合)、Aさんの場合は足腰がしっかりしていましたし、女性で対応した方が良いのでは?と進言しました。しかし「あんなに暴れるのに男性でなくてはできないよ」という考え方に職員が偏ってしまい、男性と女性二人体制で介助するという対応に決まりました。
そんなとき私に介助の機会が訪れました。一緒に介助する男性職員には近くで待機してもらうように頼み、暴れた際はヘルプに来てもらうことにしました。Aさんは女性同士で和やかに会話しながらですと脱衣していただけるということに気が付き、それまで叫び声を聞くばかりだった彼女の入浴介助が初めて穏やかなものになったと感じました。Aさんが体を洗っている間に男性職員に頼み、衣類を新しいものに交換し、体も衣類も清潔保持ができました。
この方法は試験的で、しかも一か八かの方法でしたが、対応を決めるリーダーに乱暴な方法を改めて欲しく、角が立つようなやり方でしたが強硬手段をとりました。リーダーはリーダーで暴れる入居者に対して女性職員だけで対応させて怪我をさせてはいけないという配慮ですので、一方的に責めることはできませんが。
清潔保持の難しさ
Aさんの入浴問題は乱暴な態度でなければ、80パーセントの確率で穏やかに入っていただけるようになりました。しかし、なかなか異臭は改善されず、いつも穏やかに日常を過ごしている彼女に仲が良い利用者様ができませんでした。
理由はリハビリパンツに失禁を繰り返し、しかも交換していないことでした。トイレに向かうタイミングでお声掛けをしてみたり、時間を見てトイレにお誘いするなど気をつけてみるものの、職員の少なさや一貫した対応ができていないため、匂いに関して改善することができませんでした。
職員の対応の落ち度
私は専業主婦になるまで主人の転勤や妊娠などで転職をしてきました。その度介護職を選び、コツコツ経験を積んできたつもりなのですが、その度新人とし1からその施設で勉強しなくてはいけません。施設それぞれで介護方法(方針)の癖があるからです。
やはり新人は立場が弱く、進言しても通らないことも多いわけですが、一定数の職員からは賛同を得ることもでき、めげずに身についている介護観でケアできるように頑張ってきました。
しかし、「こうでなければならない」と信じ過ぎ、広い視野が無くなってしまった結果、良いケアができなくなっているのではないかと思う時もあります。これは先ほど解説した男性職員にも言えることで、「入所者が暴れるから男性職員で入浴を対応するしかない」と思い込み、他の手段が見えなくなってしまうと良いケアはできません。
施設それぞれで介護の仕方(方針)が違うことはもちろん、職員の入れ替わりが早い業界ですので(離職率が高い)、もし職員と気が合わないのであれば躊躇なく他の施設に変えた方がいいと私は思っています。職員の対応次第では周辺症状が悪化するケースもありますので、良いことはありません。
[参考記事]
「認知症の周辺症状ってどんな症状なの?」
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