以前から、「抗コリン作用をもつ薬」を使うと物忘れなどの認知障害が現れ、薬を止めると治まることが知られていました(抗コリン作用については後ほど説明)。
そして最近では、アメリカ(シアトル)のワシントン大学の研究グループが抗コリン作用を持つ薬が認知症に関係があるかどうかの研究を行い、2015年1月26日「JAMA Internal Medicine誌」に発表しました。
この研究では、65歳以上の認知症のない3434名の高齢者を対象に、約7年間観察したところ、23.2%に当たる797名が認知症を発症し、そのうちの637名はアルツハイマー型だったことが分かりました。
どのような抗コリン作用をもつ薬を使っていたかを調べると、かぜ薬、花粉症の薬、胃腸の薬や、鬱の薬などを飲んでいたことが分かりました。
抗コリン作用のある薬を長期で使用するほど、認知症になるリスクは高くなり、1日の標準用量を3年以上使用すると、認知症のリスクは1.54倍になるとのことです。
では抗コリン作用の説明とその作用を持つ市販薬にはどのようなものがあるのかをご紹介します。
抗コリン作用とは
抗コリン作用は、アセチルコリンという胃や腸などを活発にする物質を抑える作用です。要するに、内臓が活動しすぎる状態を抑えて、胃炎や腸炎、けいれんなどの症状を改善する作用があります。同時にこのアセチルコリンは、脳の記憶や集中力といったところにも関わっているので、これを抗コリン作用で抑えると脳の活動が弱くなってしまいます。
また、薬の中には、この「抗コリン作用を副作用としてもつ薬剤」が存在し、それは抗ヒスタミン薬に該当する鼻炎薬やかぜ薬です。鬱の薬も副作用として抗コリン作用を持ちます。
身近な抗コリン作用を持つ市販薬
ドラッグストアで、かぜ薬などを購入したことは、誰でも一度はあるのではないでしょうか。店頭に並んでいる抗コリン作用を持つ薬は、数多くありますが、その一部をご紹介します。
抗コリン薬の市販薬は、胃痛や腹痛などに効果のある薬「ブスコパンA錠(エスエス製薬)」「ストパン(大正製薬)」などがあります。
ロートエキスという成分も抗コリン作用がありますが、これが含まれる胃腸薬も市販薬では多く、胃痛に効く「スクラート胃腸薬(ライオン)」や、下痢止めの薬である「ストッパ下痢止めEX(ライオン)」などです。
また、抗ヒスタミン薬である、かぜ薬や花粉症による鼻炎の薬にも、副作用として抗コリン作用をもつ薬が多いので注意が必要ですが、「パブロン鼻炎カプセルS(大正製薬)」「ベンザ鼻炎薬α(タケダ)」「フォルチュア持続性鼻炎Cap(東和製薬)」などがあります。
これらの抗ヒスタミン薬は「第一世代抗ヒスタミン薬」と言われますが、抗ヒスタミン成分の他に、「ベラドンナ総アルカロイド」という鼻水を抑えてくれる成分が入っていることが多く、これはアセチルコリンを抑える成分になりますので、抗コリン作用があります。「アルガード鼻炎内服薬Z(ロート)」や「パブロンAG錠(大正製薬)」などのかぜ薬にも「メキタジン」という抗コリン作用を持つ成分が含まれています。
このように身近な薬が認知症のリスクを高めてしまいますので、若いうちから薬に頼らない生活を送ることをお勧めします。
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