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認知症介護で身体拘束はどこまでが許されるのか

 

 今回は認知症の人を介護をする際の「身体拘束」について説明していきます。

 身体拘束は自由な意思決定を剥奪し、尊厳を傷つける行為です。行動を強制的に止められて、どうしようもない状況に身を置くわけですから、症状は増悪するでしょう。当然ながら基本的には許されませんが、物事には例外がつきもので身体拘束にも当てはまります。

 身体拘束は禁止されていますが、以下の例外もあります。
拘束しなければ本人又は他人に危害が及ぶ可能性があるケース
〇拘束以外に方法が無い
一時的な拘束であること

 これをすべて満たした場合に限り、身体拘束の会議(事業所が編成)での決定を行います。そのうえで、拘束中の利用者の行動や心理状況・どんな言動があったかなど詳細な記録をしなくてはなりません。

 上記の全てを満たすと例外と見做され、合法的に拘束が可能です。逆に言えば、これらを満たさない状況での拘束は全て禁止です。条件を満たし例外的に認められる拘束の場面というのは、そうそう遭遇するものではありません。私の8年間の介護職の中で1度だけあります。私が以前勤めていたグループホームで自傷防止にミトン(下の写真)を使用しており、外部監査で指摘された事があります。

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身体拘束に該当する行為とは

〇四肢を縛る・体幹を縛る・鍵を閉めるなどして自由な意思において外へ出られないようにする

〇拘束衣を着せる

〇ミトンを着ける(手指の機能を奪わない五本指のものは拘束には当たらない)

〇ベッドに4本柵を入れ、降りられないようにする(柵自体は2本でも柵の反対側が壁側である場合などは降りられない状況の為、拘束に当たる)

〇向精神薬をたくさん投与する
というのが拘束と聞いてすぐ頭に思い浮かべる内容です。

 厚生労働省が拘束にあたる行為として、「身体拘束ゼロへの手引き」に具体的に指摘している内容は以下の行為です。

〇徘徊しないように、車椅子や椅子、ベットに体幹や四肢をひも等で縛る。

〇転落しないように、ベットに体幹や四肢をひも等で縛る。

〇自分で降りられないように、ベットを柵(サイドレール)で囲む。

〇点滴・経管栄養等のチューブを抜かないように、四肢をひも等で縛る。

〇点滴・経管栄養等のチューブを抜かないように、又は皮膚をかきむしらないように、手指の機能を制限するミトン型の手袋等をつける。

〇車椅子や椅子からずり落ちたり、立ち上がったりしないように、Y字型抑制帯や腰ベルト、車椅子テーブルをつける。

〇立ち上がる能力のある人の立ち上がりを妨げるような椅子を使用する。

〇脱衣やおむつはずしを制限するために、介護衣(つなぎ服)を着せる。

〇他人への迷惑行為を防ぐために、ベットなどに体幹や四肢をひも等で縛る。

〇行動を落ち着かせるために、向精神薬を過剰に服用させる。

〇自分の意思で開けることのできない居室などに隔離する。

近い将来は?

 介護業界は今、目まぐるしいスピードで考え方が進んでいます。「座ってて」或いは「止めて」など言葉で行動を制止する行為(これはスピーチロックといい、介護現場でよく見聞きする光景です)も広義での拘束や虐待と捉われてきています。

 事業所によっては、物理的な拘束だけでなくスピーチロックも行っていないか定期的に確認している所もあります。あくまでも私個人の意見ですが、スピーチロックも広義などではなく、拘束であると省令で明確に示すべきだと思います。実際に介護現場では、人によってスピーチロックを当たり前と思っている人もいますから。

 スピーチロックを放っておくと、違う面で悪影響が出るからです。介護職員が「汚いなー」と認知症の入所者を罵る場面も目撃したことがありますが、こういう言葉の暴力を助長するからです。

身体拘束を防ぐ対策(考え方)

 身体拘束はなぜすべきでないのかという事を根幹から理解してください。身体拘束をすると認知症の症状が悪化し、さらに介護が大変になります。拘束は問題解決を先送りしているだけで、解決策にはなりません。症状が悪化することで介護する人の負担が増えることを考えると、拘束するに値するのか自然と見えてきます。

 例外として許されていても、認知症の本人にとってみると拘束される状況とその悪影響を受けることは変わりありません。例外に当たるかどうかを基準にするのではなく、まだ行っていない代替え案が無いのかどうか真剣に考えてみてくださいね。

[参考記事]
「[認知症介護]弄便のため身体拘束を提案するが家族は拒否」

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