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老人ホームでの作業療法士の役割とは

 

作業療法士という職業、ご存知ですか?簡単に言うと、体と心のリハビリテーションを様々な作業活動を通して行う専門家です。

リハビリ…というと、歩く練習の歩行訓練やマッサージを思い浮かべる方も多いかと思いますが、作業療法士は元々精神病院で心のリハビリを行った事が始まりです。ですのでリハビリの内容は体に対して行うもののみならず、精神面にアプローチするものと多岐に渡ります。また療法士自身の経験やアイデアにより、作業の幅が広がっていきます。

私が作業療法士として勤務していたのは、老人ホームです。最近では、多くの老人ホームで療法士が在籍し、活躍しています。老人ホームは、有料老人ホームや特別養護老人ホーム、老人保健施設などいくつかの種類に分けられており、それぞれの施設によって目的や特色が異なるので、そこで療法士がどのような活動を行なうかも異なってきます。

今回、私が行っていた作業療法士としてのお仕事を少しご紹介するのですが、ほんのひと例にすぎません。今まで療法士のことを知らなかった方に、知って頂ける機会になれば嬉しいです。

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<身体機能のリハビリ>

病気やその後遺症、障害により行えなくなってしまった活動に対して訓練を行います。訓練を受ける人の方向性(自宅へ戻るか、施設生活を継続するか等)により、優先順位を決めて取り組みます。

例えば、脳梗塞で半身麻痺の後遺症が残った方で、自宅復帰を目標とする方がいました。麻痺となると、日常生活全てにおいて今までのようにいかなくなるため、ベッドから起き上がる所から、トイレや食事、入浴等今の身体機能で安全に行える方法を考え、練習します。

同時に、ご自宅の様子を伺い、さらに必要となる活動(階段昇降や家事活動など)はないか、危険な箇所はないか、手すりの設置は可能かなど、その方の生活を想像して細かく評価します。都度その方の身体機能の評価を行い、練習内容を見直し、自宅生活での動作に近づけていきます。ご家族への介護指導等も必要に応じ行い、ご自宅へ送り出します。

<認知機能のリハビリ>

私が勤務していた病院では、半分以上の方に認知機能障害がありました。施設生活となると日々のスケジュールは決まっているし、食事もおやつも時間になれば出てきます。なかなか自分で考えて決定して実践するという機会がない為、脳は怠けていき、その結果、認知機能は衰えやすい状態になります。

その為、リハビリでは「考える機会」を作るのです。定期的に認知機能のテストを行い、レベルに相応する訓練を実施していきます。

認知機能が低下してくると、新しい事や慣れない事を行うのが難しくなってくるので、身に付いている習慣的な範囲での活動を取り入れます。例えば、洗濯物たたみや食器洗い、簡単な調理など、特に女性は活き活きと行う人も多くおられます。また、その人の趣味や昔行っていた職業を活かした活動、例えば塾の講師だった方に計算問題の採点を依頼するといった事も行ったりします。

<精神機能のリハビリ>

私が勤務していた病院では、うつ病やアルコール依存症、統合失調症など、精神疾患を患っている方も数名いらっしゃいました。症状が治まっても、疲れやすかったり、意欲や集中力が続かない等の理由の為、日常生活がスムーズに送れないことがあります。そういう場合、個人またはグループで作業や活動を行い、改善や維持を図っていきます。

ただし、施設での集団生活が難しい状態となった場合は、精神病院にて加療をしてもらう必要があります。

その他、居室の環境を見て、その方が安全に過ごせる環境を提案したり、転倒等の事故が起きた際、原因と対策を検討したり、医師と内服薬についての相談・検討を行う事もあります。

高齢者は、病気や障害をいくつも抱えている事が多いです。その為、何に一番困っているか、何が一番の望みか、その人らしい生活とはどのようなものかといった事を熟慮して、優先順位を見極めます。

しかしながら、年齢を重ねる毎に衰える現実からは逃げられません。高齢期のリハビリでは、機能を維持する事が大きな目標でもあります。その人の残された機能を最大限に活かす作業や活動を模索し、出来るだけ主体的に生活が出来るよう支援します。

身体機能・精神機能と、様々な角度から物事を見る事ができる作業療法士だからこそ、様々な場面で活躍ができるのです。

<最後に>

リハビリは、病気や障害を『治す』ではなく『上手につきあう』方法を一緒に見つけて練習するのです。

よく、「治して」と言われるのですが、こちらが提案しても、練習してもらえないと何にもなりません。ご本人の努力も必要不可欠なのです。言うなれば二人三脚の作業なのです。責任も重いですが、目標を一緒に達成出来た喜びも大きいです。

始めにお話しした通り、これらの事はほんの一部にすぎませんが、「へー、身体機能と精神機能のリハビリを行なっているんだ」と思って頂けたら作業療法士の世界の入門はばっちりです。

[参考記事]
「認知症患者に対するリハビリテーションの必要性」

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