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認知症による被害妄想への対応法

               

今回の主人公はアルツハイマー型認知症の83歳の女性です。グループホームに入所してから、他の利用者様との交流を好まずレクリエーション活動にも参加することなく、居室にて一人で過ごす事が多かったです。笑顔も少なく、声かけすると「私、どうかしちゃったのよ。頭がおかしくなっちゃったみたい。」と進行していく認知症状を自覚しているかのようでした。

彼女は独身で団地に独居で住んでおり、唯一の家族と呼べる人は遠い場所にいる甥っ子さんだけでした。昼夜問わず、被害妄想の症状が見られました。

入所してから間もなく、「ここは私の家じゃないから、いつ帰れるの?」と不安な様子でした。また、「知らない人がそこに立っている。ほら、追いかけて来るよ!」と恐怖に怯えていました。

他の利用者様から「あんた何言ってんのよ!誰も居ないじゃない。おかしいよね、この人。」と否定されることから、気持ちの落ち込みが激しかったです。ですので、なるべく職員が寄り添い、妄想のお話があったとしても傾聴し否定しないことに努めました。

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被害妄想の具体例

ある日の深夜1時に部屋から物音がしたので部屋に行くと、タンスの中の衣類や物が散乱しており何かを探していたので、声をかけました。すると険しい表情で、「私のお金がないの、盗られたのよ!」と泣き出してしまいました。落ち着かず、部屋中歩き回っていました。また部屋の床には尿失禁がありました。

被害妄想への対応法

「一緒に探しますから待っていて下さい。」と声をかけて、雑巾を用意して「床の掃除をさせて下さい。」と話しました。その間もあちらこちらに動き回っていましたので、「一緒に探しましょう。」と片付けながら探しました。

「昨日、銀行に行って100万円おろして来たのよ、きっとあの女が盗ったに違いないのよ。」と言いましたが、昨日は何処へも出かけていませんでした。「見当たらないですね。少しベットに横になって休みませんか?」と声をかけましたが落ち着く様子はみられませんでした。

一時間半程して疲れた様子でベットに腰かけたので、声をかけたら「ないみたい・・・銀行に電話したい。」と言われたので、「もう営業時間が終了している」と言いました。そうすると「仕方がないわね。」と言ったので、私は「明日の朝になったら確認してみましょう。もう夜中なので休みましょう」と話しました。

それでもまだ気になっている様子で、窓を開けて外を暫く眺めて「あそこにあの女が居るのよ。私にはわかってるの。あの女がお金を取ったの」と言いました。私は、「必ず何かあれば全力で守りますから大丈夫ですよ。」と背中をさすりながら、なるべく穏やかな口調で返答しました。

その後、窓を閉めてベットに腰をかけて箱の中を見ていたので、「今、医師を薬を持って来てくれたので飲みましょう。」と言って、不穏時の薬剤を服用していただきました。その結果、朝まで熟睡してくれました。

日中は不穏にならないように家事の手伝いを職員と一緒に行ない、寄り添うことにしました。そして「ありがとうございました。とても助かりました。」と感謝の言葉を伝えるように、ケアの統一に努めました。その結果、生活にリズムができ、次第にレクリエーション活動にも参加してくれるようになりました。

相手を否定するのではなく、受け入れることが何よりの薬だと思います。

[参考記事]
「認知症の母の妄想にどのように対応したのか」

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