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認知症による帰宅願望が「嘘」によって解決した事例

 

はじめまして、特養併設のグループホームにて認知症の高齢者の方を相手にお仕事をさせて頂いてます。毎日が驚きの連続ですか、それも楽しみとして働かせていただいてます。早速ではありますが体験談、解決方法を記載したいと思います。

認知症と診断され、3年ほど前にグループホームへ入所された86歳の女性の方です。この方は脳梗塞を患い軽い右麻痺があり、右足にプラスチック製の短下肢装具を付けていました。装具は付けていましたが、筋力の低下から足が内側に曲がっていってしまいます。ですので職員が支えて立っていただいていますが、それでも右に倒れてしまうので、付き添いながらの歩行でした。一人での立ち上がり、歩行はバランスを崩してしまい転倒の危険がありました。

脳梗塞を患った後から認知が進んでしまい、意思疎通が難しい時もありましたが、普段はとても穏やかに他の利用者さんとお話しをされていたり、新聞を真剣に読んでおられたり、時には簡単な食事のお手伝いもして下さいました。

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帰宅願望の現れ

しかし次第に今までは無かった帰宅願望が強く現れ始めました。毎日ではありませんでしたが、主に夕方になると、落ち着きがなくなり、周りをキョロキョロしたり、机の上の物をヘルパーカーの中にしまったり、その行動はいつもとは違う様子でした。

不穏になると、椅子から立ち上がって「息子が迎えに来るから、早くバスに乗せて」とおっしゃり、職員が「息子さんは今日は来ませんので、ここにいて下さい」と伝えて座っていただくも、1分しないうちにまた立ち上がり、職員が目を離すと、バランスを崩し転倒してしまう事が増えていました。

転倒してしまった後は、とても興奮されていて、何を言っているのか分からない状態でした。バイタル確認や外傷疼痛の確認も興奮の為できないくらいでした。

しばらくすると落ち着きを取り戻し、何で床に座っているのか、何故みんなが私をみているのか、不思議そうにされながも、職員に支えられて椅子に座りなおし、その後は何事も無かったようにいつもの穏やかな方に戻っているのです。

帰宅願望の対策1

対策も色々考えました。リビングのソファなら一人で立ち上がる事は出来ないだろうと考えましたが、台所からソファが死角になってしまい、その案は無しになりました。

席を変えて台所からすぐに向かえる場所にしてみたり、周りが賑やかなら不穏にならないのではとも考え、周りにおしゃべりが好きな利用者さんを座らせてみたり、椅子を重たい物に替えてみたりしました。しかし効果はありませんでした。

不穏になってしまうとリセットがきかず、食事の時間もソワソワしてしまい、全然召し上がって下さらない為、食事介助をして召し上がっていただく様な状況でした。それも食べて下さったり、食べてくださらなかったりでした。

帰宅願望の対策2

ある日、「バスに乗せて」と言う言葉が、頻繁に出てくことに気付きました。そこで外がよく見える部屋の窓側に、手作りのバス停を作り、椅子を用意してそこに座って頂きました。

するとその方はずっとそこに座ってバスを待っている様になりました。そして外が暗くなったり、気が済んだりすると、
「バスは今日は来ないのかしら?」
「暗くなったから、今日はやめる」
などおっしゃり、落ち着いてくださいました。

落ち着いたところで、職員がその方に「今日はこちらに泊まっていって下さい。食事も用意出来ているので。」と食卓へ誘導します。食卓に着き、立ち上がったりする事なく、食事も自分で召し上がる事が出来るようになりました。

この例はこの方だけにしか対応していないかもしれません。騙しているのかもしれません。誤魔化して本来の彼女の訴えを退けているのかもしれません。職員が楽に他の仕事をする為のエゴかもしれません。この方法もいつまで有効かわかりません。

本来なら不穏になってしまったご利用者様に親身に寄り添い、話しを聞いて解決の糸口を見つけていくのがベストだと思っています。しかしあくまで私は認知症介護の中では嘘も一つの手段だと考えています。もちろん欺く様な嘘ではいけないですが、相手の心を落ち着かせる嘘は悪いとは思っていません。塞ぎ込み、引きこもり、それによってますます認知症が悪化してしまう方が問題です。

[参考記事]
「認知症による帰宅願望を止める方法とは。時にはハグも有効」

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