この記事は介護施設に勤める30代の男性に書いていただきました。
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みなさん認知症というとどういった症状を思い浮かべますか?一番最初に思い浮かぶことは「様々な事を忘れてしまう」ということでしょう。
しかし認知症の症状には様々なケースがあります。今回はそういったケースの中から実に印象に残っているものを紹介していきたいと思います。
みなさん「弄便行為」というものを聞いたことはありますか?弄る便と書いて「ろうべん」と読みます。意味は「便を弄る(いじる)」ということです。以前うちの施設に入居されていた方で、この「弄便行為」がとてもひどい人がいたので紹介していきます。
年齢は93歳男性でアルツハイマー型認知症でした。ご家族に聞くと定年退職まで学校で教職を続けられていた方で、実に穏やかで優しい人柄だったそうです。しかしうちに入居された時からその面影は全くといっていいほどありませんでした。いつも怒っていて、特に機嫌が悪い時にはスタッフに手を出すことだってありました。
私たち介護職員は入居者の事を差別するわけにはいけません。しかし、この方だけはみんな嫌っていました。暴力だけが皆が嫌う理由ではありません。なんといっても一番の理由は、そう、「弄便行為」です。この方は本当に弄便がひどかったのです。
また便をすべて出し切ることができない為、いつも肛門には少し便が降りてきている状態でした。そして肛門に自分の指を入れて、その便を食べたり・壁につけたり・服につけたり・私たち職員につけたりされます。そういったことが毎日続いたのです。
私たちに練りつけるのも仕事ですのでまだ許せます。しかしその方はこともあろうか、他の入居者の髪の毛にべたべたと便をつけてまわられたのです。
弄便に対する対応
こうなってしまっては、私たちも対策を考えなければなりませんでした。そして考えたのが、自分では取ることが出来ないミトンを両手にはめるということでした。
これは身体拘束にあたる為家族に了承を得ないといけません。状況を話せば家族はなんなく了承してくれるものだと思っていました。しかし家族はこれを拒否したのです。そして、自分でズボンを脱げないようにするためツナギの着用を考えました。これも身体拘束にあたる為家族の了承が必要です。またまた家族はこれを拒否しました。
じゃあみんな毎日便まみれになって生活しろということなのか?と言いたかったのですがそこは我慢です。結構家族は身体拘束を了承したがらないものなのです(参考記事「認知症介護で身体拘束はどこまでが許されるのか」)。自分の親が同じ事をされると考えたときに、簡単に了承出来るかと言われたら難しです。こういったこともあり、この方の対策は結局何もなくなってしまいました。
そして半年ほどたった時にこの方が肺炎で入院することになりました。退院後は違う施設に入居することになり、私たち職員はすごく安堵しました。この方を介護するのが嫌だという理由で職員が一人辞めていますので、これ以上職員が減っては困るという思いがあったからです。この辞めた職員はまた入って3カ月の新人(初の介護の仕事)でしたので「介護する仕事がこんなに大変だとは思わなかった」と言って辞めて行きました。
それだけ介護の仕事というのは大変だということを預けているご家族にも理解していただけたらと感じています。
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