この記事は家で祖母の介護をしている女性に書いていただきました。
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認知症になると、昔の話はよく覚えていると言いますが、正にその通り。認知症の祖母は最初は昔の思い出を話す程度だったので、私は『最近物忘れが多いわりには、昔の話はよく覚えているね 』と話していました。
しかし、認知症が進行すると昔の記憶も怪しくなり、行動が悪い方向に変化していきました。よく間違えていたのは、亡くなった姑の事をまだ生きていると思い、仏壇にある写真を見て、「誰がこんなイタズラした、イタズラじゃすまされない」と激怒しました。何を騒いでるのかと思い、私がかけつけると「お前かこんなイタズラしたのは」といきなり私を平手打ちしました。「もう亡くなってる」と言うと「勝手に殺すな。生きてる人に失礼だ。お前は最低だ。」と言うのです。
それを聞いた祖父が、「いい加減にしろ、もうとっくに死んでるだろうが」と祖母を怒鳴りつけました。すると散々生きてると言っていた祖母は
「えー死んでるの?あらそうだった?いつよ?」と急におさまりました。祖母は私を叩いた事も忘れ「亡くなってたんだってさ。あなた知ってた?」と私にサラッと言うので、叩かれたこっちは、イライラします。このように、間違いだと気づいても、何もなかったことにしてしまうのです。祖母は都合の悪い事は直ぐ忘れ、また自分の主張が通らないと怒るのて、子どもに戻っている感じでした。
戦時中の夫婦なので、夫の言う事は絶対的な所があり、祖父の言う事は聞くのです(なぜか、これは記憶が悪くなっても分かるようです)。しかし、祖父も介護が必要なので、いつも側に居られないのですが、祖母の思考が混濁して手に負えない時は、祖父に言ってもらうようにしました。まるで、子どもが親に怒られて言うことを聞くように大人しくなりますので、認知症になっても夫婦の上下関係は変わらないのだなと思いました。
しかし、言い聞かせても、理解しているわけではなく、何回でも繰り返します。先ほどの出来事があった数日後には「姑が居ない」と警察を呼んでしまいました。警察には祖母が認知症であることを説明したのですが、祖母は自分の主張が通らないと分かると警察の人にも激怒するのです。
その後も既に死んでいる姑が具合が悪いと救急車を呼び、またタウンページを使い、姑のためのベッドを注文しました。ベットは事情を説明してキャンセルをしたのですが、これらのことで数えられないほど謝りました。
これまでの妄想では姑は死んでいないという前提でしたが、今度は姑が死んだと言って全ての親戚に電話をしていました。そのせいで、電話代が凄く高くてビックリした覚えがあります。電話線を抜くわけにも行かないので、祖父の横に置いて、かけさせないよう見張ってもらいました。
とにかく他人に迷惑をかけたくなかったので、介護が必要な祖父まで巻き込んで、あれこれ知恵を出し合い、家族総出で介護していました。しかし、それで認知症の症状が収まるわけではありませんでした。
犬がいなくなったと張り紙を貼る
昔飼っていた犬が居なくなったと言い出し、家の周りの電柱などに『犬がいなくなりました。探したら100円あげます。』と殴り書きで書いた紙をご飯粒で貼っていました。100円とは昔の価値での100円のことで、その当時の記憶で祖母は生きていたのでしょう。祖母が「100円札を何枚か用意して」と言ったので、それに気付きました。
ご飯粒で紙を貼ったのも、糊という商品がなかった時代の記憶だと思うのです。このように、認知症の人は記憶の中では現代に生きているとは限らず、自分が小さい頃のイメージで生きている場合もあるのです。
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