在宅の介護サービスに関して「思ったとおりのサービスが利用できない」「一方的にサービスを進められた」などの不満がある人も多いかと思います。今回はより良いサービスを受けるために、「居宅サービス計画書」いわるゆ「ケアプラン」がどのように作られるのか、その作成手順について解説します。
ケアマネジャーの選定
要介護度の認定がされて「介護や支援が必要である。」と判定されると、担当してくれるケアマネージャーを探すことになります。ケアマネジャーは介護支援事業所などに勤務しているのですが、市町村の窓口や地域包括センターで事業所の一覧表をくれますので、その中から選ぶこともできます(直接、紹介してくれることは少ないです)。また、ご近所や親戚、お友達など介護保険を利用したことのある人からも情報を集めましょう。
また、要介護度の認定された方が入院中であれば、病院の地域医療連携室、相談課に相談します。病院の系列事業者ばかり紹介されることもありますが、ご希望のサービス事業所がある場合はそちらに紹介をお願いします。
アセスメント
入院中は病院内で聞き取ることもありますが、私は基本、ご自宅を訪問しています。どんなことを聞くのかというと、お身体や認知機能の状態、要介護状態になった原因、ご本人の介護サービス利用の希望、どういう生活を望んでおられるのか、ご家族の気持ち、どんな援助を望んでおられるのかを聞かせてもらいます。
又、お家に行くことで今までの暮らしぶりを推し量ることができます。私は、お家にかかっているカレンダーや食器類なども情報源にします。
ご家族は「何故、デイサービスに行くだけで、いろいろ聞かれるのか」と思うでしょうが、介護サービスを利用すること自体が目的ではありません。介護サービスを利用することで自立度が上がり、ご本人が望まれる生活が送れるようにするためです。より効果的な介護保険利用のために聞き取りは大事な一歩です。
また、ケアマネージャーから、ご希望以外のサービスをあれもこれもと提案されることもありますが、最後に決めて頂くのは、ご本人もしくはご家族です。
事業者の決定とケアプランの最終決定
ご本人やご家族の希望もふまえ、施設の見学や紹介をします。また、手すりや段差の解消が必要であれば、市町村に住宅改修費の申請をします。そして、施設を決めた後には利用希望の各介護サービス事業所の責任者、医療関係者とご本人、ご家族等で会議を持ちます。
会議ではご本人やご家族も発言、提案できますし、また、サービス事業所責任者が出席しますので疑問があれば質問ください。ご家族によっては、「認知症でわからないから」と本人抜きで決めようとされることがありますが、ご本人にも意向があります。特に施設の見学はご本人を同行することを勧めます。認知症を発症されていても直感でご自分に最適な居場所を感じられます。
その後、ケアプランの最終決定が行われ、各事業所間と医療サービスの連携が図られます。
居宅サービス計画書(ケアプラン)の発行
居宅サービス計画書が出来上がります。1表(1ページ目)は要介護状態になった経緯とご本人、ご家族の訴えや希望が記載され、下部にそれに対するケアマネージャーの援助方針が記載されています。
2表(2ページ目)は医療や介護のサービスを利用することで満たされたい事、かなえたい事(ニーズ)、目的設定が記載されています。デイサービスやホームヘルパー等の具体的なサービスの内容や利用回数もこのページに書かれます。また、ご家族による援助やご友人、ご近所などの協力者は支援内容とともに記載され、関わりのある人の把握ができるようにします。
長期目標は半年、1年後の達成を、短期目標は利用から3ヶ月ぐらいの達成を目指します。例えば「筋力低下で歩けないので少しでも自力で歩きたい」とご本人が思っているとすれば、3ヶ月で伝い歩きしてトイレに行ける等、目標を決めます。
3表(3ページ目)は週間の予定表ですが、ここにはご本人の日常の生活リズムも記載されます。
このように介護保険サービス、医療での治療等すべてのサービスが目標達成に向けて連動するように提供されます。
利用票・提供票が発行。いよいよサービス利用
ケアプランに基づいて、毎月のサービスの提供日とその時間、そしてサービス内容などが記載された「利用票」を作成し、利用者に渡します。これによって、各サービスが重なり合うことなく、おのおのの時間にサービスが提供されていることが確認できます。「提供票」は利用票と同じですが、これはサービス提供事業者に渡しますので、利用者は関係ありません。
毎月、ケアマネージャーはご本人をご自宅に訪問して計画に不備がないか、順調に円滑に提供されているか。ご本人が自立に向かっているかなど、評価を行います。必要であれば、計画を修正します。
ケアプランはご本人のものです
ご本人のために立てている計画ですが、通常は悪いサービスを提供されても「事業所さんにお世話になっているから」とか「事業所さんに面倒くさいことを言っては家族が困るから」とか、ご自身が我慢される傾向があります。
ご本人の状態や希望も変化するものですし、実際に使ってみたけど雰囲気が合わないとかもあります。色々な理由で計画は変わっていきます。ですので、利用しながら、改善して欲しいところははっきり言った方がいいです。場合によってはご本人やご家族の希望で担当ケアマネージャーや居宅支援事業所を変更することもできます。
よいケアマネージャーでしたら、契約のときに解約のことも説明します。私も契約書は、渡すだけでなく、声に出して読み上げます。充分に説明いたします。ケアプランについても、発行の際は、読み上げて承認を頂きます。ケアマネージャーを変えてご本人の状態が良くなることもあります。ご家族も「うちの親とケアマネさん合わないな。」と思ったら、一度ケアマネージャーを見直したらいかがでしょう。
[参考記事]
「デイサービスのキャンセルによって事業者が被る損失」