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認知症の人が服を着替えるのを嫌がる場合にはどうしたらいいの?

 

 認知症の人が着替える事を嫌がったり、服を正しい順序で着れない事は別に珍しい事ではありません。ずっと着替えずにいると汚れで見た目が良くないだけでなく、衛生的にも良くありません。疥癬などの感染症が発生する一因にもなり得るので、何とかして着替えてもらいたいですね。

 ですが、着替えて欲しいという介護者だけの都合で「臭いから早く着替えてよ」などと高圧的な言い方をすればさらに対応が難しくなります。

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失敗しても良い事を伝える

 認知症の人が着替える事を嫌がる反応は、介護者が普段どのような態度で接しているかによって違います。つまり、「着替え」という一面だけを見ていたのでは対応を間違えます。

 例えば着替え以外の「何か物事に失敗した時」に責めたり怒ったりすると、認知症の人は非常に敏感に察知します。その場の快と不快は分かるために、そのような対応をされた経験が積み重なった結果として、自信を喪失し、やる気を奪われた状態になるのです(言われたことは覚えていないが、嫌な感情だけは覚えている場合も)

 ですので、普段から失敗しても責めない対応をし続ける事で、認知症の方も委縮することが無くなり、着替える事を嫌がる態度が改善されるケースもあります。服を着替えるのを嫌がる場合には介護者の普段の対応に何か間違えはないのかを考えてもいいですね。

服を着る過程においてどこに問題があるのかを見る

 では次に「正しい順序で着れない場合、どうしたらいいのか」について説明しますが、服を着る過程のどこに問題があるのかによって、支援する内容も変わります。

 服を着るためには様々な種類の服を準備をしてから、着るという行動に移りますが、例えば「肌着だけしか用意していない」ということであれば服を選ぶ時点で問題があるので、服の選択から支援します。

 また、認知症の人は、物事を組み立てて行動に移す事が苦手です。これを「実行機能障害」と言いますが、認知症の中核症状の1つです。実行機能障害は、物事を順序立てて計画し完遂する事が出来ません(参考記事「認知症の中核症状って一体どんな症状なの?」)。服を着るときにも順番に着ていかなくてはいけませんので、実行機能障害が現れていると服を最後まできちんと着ることができません。

 また、中核症状の一つには「失行」がありますが、これは体に障害が無いのに、電話の使い方などが分からなくなる障害です。服の着方も忘れているケースもあり、これを「着衣失行」と言います。

 このように中核症状が原因で服が着れなくなっているケースもある為、服を着るという行為を分割して、「これは上の肌着です。これはズボンです」という風に、一枚一枚順番に手渡しをすることで、認知症の人でも服を正しい順序で着る事が可能になります。また、洋服の着やすさにも注意を払い、前と後ろが判断しにくい服は止めて、マジックテープなどで簡単に着ることができるタイプを選びましょう。

出来ることは自分でやってもらう

 認知症の人が自身でもできることを何でも介護者がしてあげることは間違えています。支援すればできることまでやってしまうと認知症の症状が驚くほど早いペースで進行します。QOL(生活の質)に関わる大事な事ですから、支援が必要な部分と自分で出来る部分を見極めて過不足のないケアをして下さい。

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