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認知症の帰宅願望に対する対応(グループホームでの実例)

 

 以前グループホームで働いていた時に、夫婦二人で入所している方がいました。旦那さんはレビー小体型認知症で要介護1、奥さんはアルツハイマー型認知症で要介護3でした。

 二人は、施設に入る前は二人暮らしをしていたのですが、同じ時期に二人とも認知症を発症してしまいました。道に迷って警察に何度も保護をされたりした事があったため、心配した近所の人が家族に連絡を入れました。

 しかし、離れて暮らす家族は一緒に住めないため、グループホームに入所する事になったのです。

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グループホームに入居したが帰宅願望が

 旦那さんの方は比較的頭がしっかりしていて、帰宅願望などもなかったのですが、奥さんは帰宅願望がひどく、毎日夕方になると「家に帰る」と言って身支度を始めるのです。

 旦那さんや施設の人間が何度説得しても、自分が認知症である事や、家に帰れない事を理解しておらず、何を言っても納得せず、毎日「何でこんなところにいるの?あなた、帰るわよ」といって旦那さんの手を引いて外に出ようとするのです。

気を他にそらすための対応

 奥さんは午前中は普通にホームの中で楽しそうに生活していますが、昼過ぎになるとソワソワしだし、夕方になると帰ろうとします。そこで夕方頃は、気をそらすためにゲームをしたり、家事などのお手伝いをお願いして「家」の事を思いださせないようにしました。

 しかし、しばらくするとやはり訴えがでてくるので、その時は職員が奥さんの気が済むまで外を歩いてもらいました。奥さんは30分ほど歩くと、疲れてしまうので、それまで職員が付き合って、一緒にホームに帰るという対応をしていました。

 訴えがひどい場合は、二人を自宅まで連れて帰ることもありました。しかし、自宅は取り壊されているため、その跡地を見ると、奥さんもやっと納得をするのです。職員も他の利用者の方の介助もあるので、いつもというわけにはいきません。

 なので、夕方になり訴えが始まったら、「今日はもうお二人の晩御飯を作っていますから食べて帰ってください」と言って、ご飯を食べたら帰れると、まず安心してもらいます。

 たいていは「せっかく作ってもらったんだから、食べなければ申し訳ない」と言いながら食べてくれました。夕飯が終わった後は、「今日はもう遅いので、今日だけここに泊まって明日帰りましょう」というふうに説明すると本人も「今日だけならいいか・・」としぶしぶですが納得してくれます。

 認知症の方は長時間記憶する事が難しいので、奥さんの場合も、その時その時で本人が納得する説明をして対処していました。そうする事で「帰宅願望」の訴えがあっても、毎日施設で暮らす事ができたのです。

その人にとって一番良い方法を考える

 以上のような対応は「認知症の人を騙している」と思う人もいるかもしれませんが、一番大事 なのは「本人が毎日、穏やかに暮らせる事」ではないでしょうか?不安を取り除いてあげる事で、幸せに暮らせるなら、それが本人にとって一番良い事だと私は考えています。

 一番いけないのは「放ったらかし」にする事です。何を言われても相手をせずに、訴えを聞き流していると、その時は楽ですが後々訴えがひどくなった時に手が負えなくなって大変です。

 認知症の方のためにも、職員が円滑に仕事をするためにも、適切な対応をする事が大事です。

[参考記事]
「認知症の入居者の帰宅願望が意外なきっかけで軽減された実例」

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