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若年性認知症(40代女性)による帰宅願望の事例

 

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入所までの経緯

 グループホームへ相談に来られたのは、ゆうさんの20代の娘さんでした。ゆうさんは46歳女性で若年性認知症と診断されましたが、家族は皆仕事をしている関係上、家で介護をすることができず、自宅から近いところで介護を行っている我々に所に来られました。

 数年前から認知症の症状は出ていましたが、最近になり徘徊が始まってしまい、大変困っている様子でした。若年性認知症は早い人で10代でなりますが、40代から急激に増えます。ゆうさんの場合、病院のソーシャルワーカーとも相談し、入所して様子を見ることになりました。

入所してからの生活

 入所初日は、娘さんも一緒に泊まり、ゆうさんの観察を行っていました。入所2日目からは、他の利用者様たちと共にお話したり、家事に興味を示されたりと落ち着いた様子がみられました。

 ですが、日が暮れてくると「家に帰らないと、迎えはまだ?」と職員に話しかけるようになりました。夜になるにつれ、グループホームの玄関に佇む姿が見られるようになりました。

 ご家族もよく面会に来てくれていたのですが、「一緒に家に帰りたい」と言われる為、苦悩されていました。

 帰宅願望は当然の感情ではありますが、集団生活をする以上は対応が必要になります。

問題行動

 面会などで外から入ってくる人が居るたびに玄関から外へ出て行ってしまうようになりました。職員はすぐに後を追って一緒に散歩をするようにして安全な環境を整えてはいましたが、回数が多かったので毎回は散歩をすることはできませんでした。

 その場合にはすぐに施設の中に入ってもらうようにしていましたが、出られないとストレスから大きな声を出すようになってしまいました。そこで、ゆうさんのストレスケアの対応が必要になってきました。

ストレスの解決にむけて

 ゆうさんは、とても温厚でグループホームに馴染めていました。他の利用者様との接触を増やすことから始めてみました。そして、職員やケアマネージャー、家族様と相談をして自宅の自室にあったものをグループホームへ多くもってきてもらうようにしました。

 ゆうさんへも「自宅に帰って何かしたいことがあるか」や気になること等を少しずつ聞き取りを重ねていきました。聞き取りの結果、娘さんが仕事から帰ってくる前に、夕食の準備をした後、テレビをみながらおやつを食べていたと分かりました。

○グループホームに慣れるまで
 夕方、職員が夕食の調理をするときに少し手伝ってもらい、その後ご家族様が選んだ少量のおやつを出してみました。リビングでテレビを見ながら召し上がり笑顔も見られました。

 その日も帰宅願望はありましたが、大きな声を出すことはありませんでした。毎日おやつの後に職員と一対一で話す機会を作り、それを習慣にしていただけるように職員一同徹底してみました。

 半年ほど経った頃でしょうか、やっと習慣にすることができたのです。お部屋も、自室と似た環境にすることができ、自室で寛ぐ時間も増えて行きました。

○その後のゆうさん
 認知症状の進行はみられましたが、グループホームでの生活を受け入れていただくことができ、昔の話をしてくれるようになりました。

 帰宅願望がでることも少なくなり、外出を楽しめるようになったので、買物や散歩へ出かけるようになり、心身ともに落ち着いた生活ができるようになりました。

 若年性認知症は、家族もとてもつらい病です。ご家族様の協力があったからこそ、ゆうさんは次のステップへ進むことができましたし、ご家族様も安心してご自分たちの生活をすることができ、心のゆとりを取り戻すことができました。

 家族が認知症になっても、家族みんなが笑顔で過ごすことができる環境がどこかにあります。今は、認知症への理解や自治体で見守る仕組み等もありますので、まずは誰かに相談することが大事なんだとおもいます。

[参考記事]
「若年性認知症の男性がタクティール(マッサージ)で笑顔が増えた訳」

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