認知症のリハビリテーションとは?
リハビリテーションは大きく分けて2つの意味があります。1つは心身の障害を改善するための治療という狭い意味でのリハビリテーションです。
もう1つは病気などで失われた人として当たり前の尊厳や権利を回復して生活を再建するという広い意味でのリハビリテーションです。認知症のリハビリテーションでは後者が重要となります。
認知症のリハビリテーションの場合、ただ中核症状などの認知機能の治療ばかり行っていては不十分です。患者さんが持っている機能や能力を積極的に活用して、その人らしい生活が継続できるようにしていくことが認知症リハビリテーションにおいては重要となるのです。
どのように実践していくの?
認知症のリハビリテーションは薬を使用しない非薬物療法に位置付けられています。リアリティ・オリエンテーション(現実見当識訓練)、回想法、バリデーションなど各種療法が存在しますが、認知症に必ず有効とされる治療法は確立されていないのが現状です(参考記事「認知症に対する非薬物療法(回想法、バリデーション、RO)について」)。
しかし、認知症の方が何かに主体的に取り組める作業の中で各種療法を取り入れていくことで認知症の進行を遅らせる効果が期待できます。
その人の生活歴や育ってきた環境によって違いますが、カラオケだったり、土いじりだったり、料理などそういう作業を生活の中に取り入れていき、その中でリアリティ・オリエンテーション(現実見当識訓練)、回想法、バリデーションなど各種療法を行っていくことがベストです。
例えばカラオケであれば桜が見える場所で歌を歌ったり、農作業で言えば旬の作物である野菜を育てたり、料理で言ったら栗ご飯を作ったり、季節の行事(ひな祭りなど)に関連のある作品を作成したりと作業の中に季節を感じる要素を組み込んでていくというリアリティ・オリエンテーション(現実見当識訓練)の手法を取り入れます。
このような一連の取り組みが認知症患者さんにとってのリハビリテーションとなります。
もちろん認知症のリハビリテーションはリハビリ専門職だけが実践するものではありません。病気や体調のことであれば医師や看護師が関わり、身体機能は理学療法士、認知機能は作業療法士が評価することが多いですが、日々の生活に寄り添うのは施設であれば介護福祉士であり、家庭であれば家族になります。
ですので、それぞれの役割を持った専門職と家族が情報を共有して、患者さんの生きがいとなる作業を生活の中で実践していくことが一番良いです。
楽しいと思える作業を行うことで薬の効果が高くなったという報告もありますので、そのケースでは処方薬の量を減らすことも必要になりますし、介護する人と専門職との連携は不可欠なのです。
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認知症リハビリテーションの効果と必要性
患者さんは様々な作業を生活の中で実践していくことで、人の役に立っている、他者に必要とされているということを実感していきます。今を生きている実感が湧くでしょうし、自信にもつながります。
それは、喪失感や孤立感を減少させ、認知症により失われてしまっていた人として当たり前の尊厳や権利を回復していくことにつながります。
閉じこもりがちな方でも、作業を行っていく中で他人とのコミュニケーションの機会も増えて行くかもしれませんし、そこから新しい活動に波及していくかもしれません。そうすることで、活動的な生活が送れるようになり、結果的には心身機能の改善にもつながります。
このように、認知症のリハビリテーションはその人らしさを取り戻し、生き生きと生活していくために必要な取り組みの1つなのです。