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睡眠薬に依存する認知症高齢者に対する対応と解決策

 

 介護老人保健施設を利用中のKさん(80代前半女性)は、日常生活で身体の支障はないものの、老人性認知症と診断されている方でした。

 物忘れが多く、自分が食事をしたことやお風呂に入ったことを忘れては
「私、食事食べましたか」
「私、お風呂に入ったかしら」
などと職員に都度確認します。

 社交性は高かったので、「はい、食べましたよ」「はい、入りましたよ」と言うと笑顔で納得される方でした。

 食事や入浴に関してはスムーズに納得されるので、あまりこちらも支障はありませんでしたが、夜間の睡眠薬に対しては強いこだわりがあり、少しでも眠れなくなると自らステーションまで歩いてきて、職員に対して「睡眠薬飲んでないからちょうだい」と、都度訴えてきていました。

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睡眠薬に対しての執着と不安

 もちろんKさんには、主治医から処方されている分の睡眠薬に関しては、職員が毎回定時に介助しながら飲んでいただいています。

「もうKさんはさっき飲みましたよ」
と職員が答えても、Kさんは聞く耳を持たずに
「眠れないんだから私は飲んでいない」
「どうして私に意地悪するの」
と、不穏になってしまいます。

 Kさんは夜間不眠になる日は毎回ではありませんでしたが、一度不穏状態になるとなかなか眠ることができず、一睡もできない日がたびたびありました。

 主治医にも報告済でしたが、毎日というわけではないので、眠剤を増やすわけにもいかず、少し様子をみてほしいとのことでした。

Kさんへの夜間対応を考える

1.
毎日ではないものの、Kさんが不穏になると一睡もできない場合もあり、昼夜逆転のリスクと、翌日の睡眠不足から転倒などのリスクがあること。

2.
Kさんが睡眠薬を欲しがった場合、処方されている睡眠薬を勝手に増やすことはできないので、その時はどうするか。

 上記の2点で話し合いがおこなわれました。

 1に関しては、翌日の日勤帯の職員がKさんに対していつもより歩行移動などに気をつけながら様子をみていくことになりました。

 2に関しては、上司の経験から、ひとつの案が出され、それを試してみて様子をみることになりました。

偽薬を用いる

 上司の案としては、睡眠薬を増やすことはできないが、睡眠薬に似た偽薬を作ることで、Kさんに納得いくまで対応してみようという意見でした。

 粉薬なら小麦粉、錠剤ならラムネのような粒状のものを利用するとのことでした。これなら身体にも悪い影響はなく、精神的に安定してくれるケースが多いとのことでした。

 看護師にも許可をいただき、まずは少量の小麦粉とラムネを薬に似せた形でいくつか用意し、Kさんの訴えに備えることになりました。

 もちろん本物の睡眠薬を偽薬を飲む前に定時で飲んでいますから、不穏を偽薬で抑えようとする対策です。睡眠薬の効き目が現れて入眠される時間まで、繰り返し偽薬を提供してみました。

安心したKさん

 ある夜間、Kさんが眠れないと職員に相談にやってきました。ここで今までなら「もう飲みましたよ」と言う流れになっていたところですが、偽薬をその場で飲んでもらい、本人も納得して居室に戻っていきます。

 2~3度繰り返してステーションまで来る日もありましたが、Kさんはそのまま居室でそのまま入眠される日が増え、夜間の不眠の訴えも改善されました。

おわりに

 人間は眠ろうとする時、何か気になることがあるとなかなか寝付けないものです。特に自分が気にしている時に否定的に発言を受けてしまうと、感情が高まってしまい、余計に眠れなくなることもあります。Kさんはこの後、夜間に不眠を訴えることもなくスムーズに眠れるようになりました。

[参考記事]
「[認知症の周辺症状⑤] 認知症高齢者の不眠に対する解決策」

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