「お父さんが同じ事を何回も言うようになったけど、これは認知症なの?」
「お母さんが少し物忘れが酷くなっているけど、認知症だろうか」
このように親(もちろん自分自身も)が高齢になってくると何かしらの異変が生じます。その時、一般の人は知識がないためにその症状が認知症かどうかは判断できません。しかし、認知症を発症する際には必ず初期症状があります(記事の最後に有名な認知症テストを付けますので、ある程度判断が付きます)。
次の行動や言動が複数当てはまった場合、認知症の初期症状として疑ってください。
①物の置いている場所を忘れる。
「ここに置いたはずだけど無いぞ」という経験は普通の人にもありますが、そんなには多くはありません。しかし、認知症の初期症状の場合はこのようなシーンが頻発するようになります。
②同じ言動を繰り返す。
「お父さん、それ先ほども聞いたわよ」
「そうだったかな?」
このように先ほど言ったことを忘れますので、あたかも初めて聞いたかのように話します。これを毎日繰り返すので、家族の人もだんだんと疲れてくるようになります。終いには「うるさい!!」と怒鳴る家族の方もいるくらいです。
③名前が出なくなる。
一般の人は「あの芸能人の名前何だっけ」というレベルですが、認知症の初期症状では普通名詞の名前が出なくなります。例えば「字が書ける細長いもの、あれなんて名前だっけ?」のように「鉛筆」の呼び名も忘れます。私の叔父は「トンカチ」という言葉が出てこなくて、「叩くやつ、なんて言ったけ?」とジェスチャーで聞いてきたことがあります。
最後にお伝えする「長谷川式簡易知能評価スケール(認知症テスト)」の⑧でテストできます。
④見当識障害がある。
見当識障害については「認知症の中でも一番多いアルツハイマー型認知症の症状は?」で説明しましたが、比較的初期の段階で出てきます。
「お母さん、今日何日?」
「うーん、何日だったかな。分からない」
のような会話が増えてきます。
最後にお伝えする「長谷川式簡易知能評価スケール(認知症テスト)」の②③でテストできます。
②見当識障害
見当識障害は「時刻や年月日」「今自分がいる場所」「一緒に話したり、食事をしている相手」など今現在の状況が分からなくなることです。
「時刻や年月日」に関しては時刻→日付→年→月という順番に分からなくなります。
⑤以前興味があったものに興味を示さなくなった。
以前趣味であった、競馬、麻雀、将棋、ゴルフ、裁縫などに興味を示さなくなります。
⑥計算間違いが多くなった。
簡単な計算が出来なくなり、買い物でも小銭の使用が困難になる。最後にお伝えする「長谷川式簡易知能評価スケール(認知症テスト)」の⑤でテストできます。
⑦攻撃的になる。
夫婦の場合、特にパートナーに対しての攻撃性が強くなり、暴言や暴力を振るう事もある。
⑧迷子になる。
外出したままで自分の家に帰ってこれなくなります。
この他にも、医療従事者が気づく初期症状としては、
①内服管理が出来なくなる。
②診察日や施設利用日を間違える。
③診察料金を支払う際に高額紙幣しか出さない。
④自分の靴が解らなくなる。
⑤会話のつじつまが合わなくなる。
⑥服装がおかしい。
といった内容です。
暴言や暴力、迷子になるなどの場合、日常生活に支障が出るケースがありますので、認知症専門医のいる医療機関へ受診することをお勧めします。
[補足]
認知症を診断する方法として有名なのが「長谷川式簡易知能評価スケール(HDS−R)」です。このテストは以下の9つの質問に順番に答えていって、その合計点で認知症かどうかを判断する方法です。
詳しい内容は「よく使用される認知症テストは2種類。長谷川式簡易知能評価スケールとMMSE」を参考にしてください。
①お歳はいくつですか?
2歳差までは正解で1点です。
②今日は何年何月何日ですか? 何曜日ですか?
年、月、日、曜日でそれぞれ1点、全部あっていれば4点です。
③私たちがいまいるところはどこですか?
自分から直ぐに言えれば2点です。
質問者の選択肢の中から選べれば1点です。
例えば「ここは家ですか、病院ですか」などの質問に答えられれば1点です。
④これから言う3つの言葉を言ってみてください。あとでまた聞きますのでよく覚えておいてください。
1: a)桜 b)猫 c)電車
2: a)梅 b)犬 c)自動車1もしくは2でテストをする。
1つ合っていれば1点、2つ合っていれば2点、3つ合っていれば3点です。
⑤100から7を順番に引いてください。
100から7を引いた数が正解であれば1点です。
さらに正解の場合だけ「そこからまた7を引いてください」と質問を続ける。
これも正解であれば1点追加します。
⑥私がこれから言う数字を逆から言ってください。
「6-8-2」と「3-5-2-9」を逆から読ませて、正解であればそれぞれ1点です。
⑦先ほど覚えてもらった言葉をもう一度言ってみてください。
先ほど覚えてもらった言葉とは④のことです。
例えば「桜 猫 電車」を1つ言えた場合は2点、2つ言えた場合は4点、3つ言えた場合は6点です。
分からなかった場合、質問者がヒントを「それは植物 動物 乗り物です」と出して、正解であれば1個正解ごとに1点です。
⑧これから5つの品物を見せます。それを隠しますのでなにがあったか言ってください。
例えば「消しゴム、歯ブラシ、タバコ、携帯電話、お札」などそれぞれ互いに無関係なものをその品物の名前を言いながら見せます。その後に品物を全て隠し、その名前を答えてもらいます。
1点正解ごとに1点です。
⑨知っている野菜の名前をできるだけ多く言ってください。
0から5種類は0点,6種類は1点,7種類は2点,8種類は3点, 9種類は4点, 10種類は5点です。
以上ですが、20点以下で認知症の疑いがあります。
11から19点で中度の認知症、10点以下で高度の認知症と判断されます。