認知症になりたい人なんていないですが、予防するために日常の食事で何に気を付けていますか?「何もしていない」という人が大多数でしょう。そこで、今回は認知症を予防する食事について説明します。
研究で分かっている認知症予防に効果がある食事は「地中海食」なのですが(参考記事「地中海食が糖尿病、心臓病、認知症、乳癌を防ぐ」)、それ以外にも「糖質制限食」も効果がありますので、この食事法を中心に説明します。
認知症を予防する食事
認知症の中で大きな割合を占めるのはアルツハイマー型認知症と血管性認知症ですが、それぞれの型においてリスクを低めるための食事について解説していきます。
①
血管性認知症は脳卒中の後に発現します。脳卒中は高血圧、糖尿病などがリスク要因として挙げられますが、これらの病気に繋がる食事は血管性認知症のリスクを上げます(一番のリスク要因は高血圧)。
高血圧(食事関連では)は塩分の取り過ぎや肥満などが要因ですので、塩を使った食品を多く摂らないことと食べ過ぎないことに気を付けてください。
糖尿病を予防する食事は次に説明する糖質制限食を参考にしてください。
②
最も多い割合を占めるアルツハイマー型認知症は、アミロイドベータという物質が排出されずに脳内に溜まり続けた結果発症します。このアミロイドベータはインスリンの作用によって排除されていますが、インスリンの働きが衰える事でこの原因物質を溜め込んでしまいます。
海外ではインスリンを鼻腔から摂取して脳に働きかけ、アミロイドベータを排除する治療法の研究が行なわれています(まだ、研究段階で確立されていませんし、日本でも認知症の薬として処方はできません)。
では、日常の食事の中で、どのようなことを心がければインスリンが正常に分泌されるようになるのかをお伝えします。インスリンは膵臓で作られるので、膵臓に優しい食事を気に掛ける事です。
[予備知識]
インスリンは血中のブドウ糖を細胞に取りこませ、血中の糖分を減らす作用があります。細胞はそのブドウ糖をエネルギーとして使い、臓器や脳を動かすエネルギー源として使います。
糖尿病の患者は膵臓の機能が衰えているので(膵臓の使い過ぎで)、インスリンの分泌力が弱いです。ですので、血糖値が下がりにくくなっています。
脾臓に優しい食事法とは
では、膵臓を気に掛ける食事とはどのようなものでしょうか。それは糖質を制限する食事です(一般的には糖質制限食と呼ばれています)。
糖質を摂りすぎると食後血糖値が高くなり、食事のたびにインスリンを分泌しなくてはいけなくなり、脾臓を酷使することになります。ですので、この糖質の摂取量を減らせばインスリンの分泌が抑えられ、膵臓を休ますことが可能になります。これが糖質制限食で可能になるのです。
糖質制限食には大きく分けて2種類のタイプがあり、厳しい糖質制限と緩い糖質制限です。一般の日本人の1日の糖質摂取量は300g前後ですが、厳しい糖質制限食は60g、緩い糖質制限食は70gから140gです。
では、糖質制限食はどういう食事法でしょうか。基本的にはお米、パン、麺類、お菓子などの炭水化物系の食品は今までよりも量を減らしてください。
糖質制限食で主に食べる食材はお肉もしくは魚、野菜、大豆製品、海藻です。魚の脂にはDHAが含まれていますが、この脂は脳の委縮を予防したり、脳細胞の活性化に効果があるとされていますし、大豆製品に含まれているレシチンも神経伝達物質の材料となりますので、糖質を制限する他にも認知症予防のメリットは大きいです。
「お米やパンは全く食べないのか」という疑問が湧いてくると思いますが、緩い糖質制限であれば小茶碗に1杯ほどは食べることは可能です(参考記事「糖質制限でお米の量はどれくらい食べていいの?」)。厳しい糖質制限の場合にはなるべくお米、パン、麺類は食べない方がいいです。お米、パン、麺類を食べなくても、野菜や大豆などから糖質を摂ることができますので、心配はありません。
[糖質制限食の基準]
〇厳しい糖質制限の1日の糖質摂取量は60g以下(1食20g以下)
〇緩い糖質制限の1日の糖質摂取量は70gから140g(1食23.3gから46.6g)
〇日本人の1日の糖質摂取量は300g前後
糖質制限食のメリット
糖質制限食の最大のメリットは痩せることです。糖質制限食では糖質の摂取量が少ないために、ブドウ糖を細胞などのエネルギーにするには限界があります。そこで、中性脂肪を燃やしてエネルギーを作ろうとするのです。その結果、内臓脂肪などの脂肪が少なくなります。
先ほど、高血圧の要因に肥満があると書きましたが、痩せることで血圧が下がる効果が期待できます。ということは糖質制限食を食べるとアルツハイマー型認知症だけではなく、血管性認知症の予防にもなります。
皆さんには是非、認知症を予防するために糖質制限食を試してほしいです。