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認知症による暴力行為への対応。退院してから別人のように変化

 

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暴力行為が始まるきっかけ

 認知症のHさん(80代男性)は有料老人ホームに入居されました。入居後すぐは認知症の症状もなく、平穏に過ごされていました。

 入居して2ヶ月後に検査のため入院することとなり、3週間ほどで帰宅されました。しかし、病院で入院している間にADLの低下と認知症が進行しており、まるで別人のようになっていました。

 これまでは食事もひとりで召し上がられていたのに、突然「何だこれは!!私を殺す気か!!」と食事を見て怒るようになりました。また、入浴介助の時に服を脱がせようとすると「何をする!!貴様!!」と暴力を振ろうとします。

 さらにベッド柵を越えて這い上がろうともし、転倒のリスクも高くなりました。

Hさんに合わせた環境整備

 Hさんはさらに暴力的になってきました。食事を提供しようとしても「こんなのいらない」と怒り、ほとんど口にしなくなりました。

 このままではHさんの体も心配なので、スタッフはまずご家族に現状を説明しました。ご家族の方から「クリームパンが好きでよく食べていた」とのことで、ご家族の方にクリームパンを用意してもらいました。

 それから施設の食事はほとんど召し上がらなかったのですが、クリームパンを見ると「おお、懐かしいな〜」と完食されるほどに。

 さらに飼っていた犬を可愛がっていたとのことで、犬の写真を見せるととてもご機嫌に。それから暴力的になった時には犬の写真を見せて落ち着かせるようになりました。

 ベッドからの転倒リスクにおいては、ベッド柵を4点にすると身体拘束になってしまうのでどうしようか悩んだ末、ご家族にマットレスを用意してもらい、ベッドの下に敷くことで万が一転等しても怪我をしないように対策することになりました。

薬は本当に適切か?

 認知症による暴力行為は全ての人が行なうわけではありません。

 温厚であったHさんがどうして暴力的になったのか、はっきりと原因はわかりませんが、処方されている薬を見直してみることも大切です。

 Hさんの場合、いつから暴力行為が始まったか調べてみたところ、認知症の進行を遅らせる薬が処方されてからでした。含まれている成分を調べてみると「突然暴力的になることがある」との記載がありました。

 もちろん全ての人に当てはまるわけではないですが、可能性があるのならと、スタッフとご家族と主治医と話し合い、薬を変えてもらうことになりました。

 ただ、薬は変更してからも2〜3週間ほどは体内に残っているので劇的な変化が見られるわけではありませんが、Hさんは好きで暴力行為をしているわけではありません。

 Hさんの苦しみを除いてあげるためにも薬の見直しも大切です。

 それからHさんの暴力行為が完全になくなったわけではないですが、環境の整備や薬の見直しを行うことで以前よりか食事量も増え、穏やかな時間が長くなってきました。

家族の協力が不可欠

 Hさんの場合、改善傾向になったのにはご家族の協力が一番大きかったと思います。ご家族の協力がなければ、Hさんの好きな食べ物や犬が好きなこともわかりませんでしたし、薬を見直すことも勝手にはできませんでした。

 暴力的になったからと、なんでもかんでも押さえ付ければいいわけではありません。暴力を振るう行為にも理由があるはずです。本人のペースに合わせた対策を考え、周囲が力を合わせて支援していくことが大切です。

[参考記事]
「暴力を振るう認知症の人への対応は雑談力が決め手」

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