認知症は4つの種類に分類できると「認知症の原因疾患の代表的な4種類」でお伝えしましたが、今回はその中の脳血管性認知症について詳しく説明していきます。脳血管性認知症とは認知症の症状が脳梗塞や脳出血などの脳の病気によって起きているものを言います。
脳血管性認知症はさらに大きく分けて次の2つに分類することが出来ます。多発梗塞性認知症は大脳皮質や基底核など脳の広い範囲に梗塞が多数発生します。そして、梗塞が増えるたびに段階的に症状が悪化していきます。小血管病変性認知症は大脳皮質の内側にある白質(神経繊維の集合している場所)などに小さな梗塞が徐々に増えることで起こります。
脳血管性認知症の特徴
①梗塞などにより急激な発症があること
アルツハイマー型認知症は緩やかに症状が進行しますが、それに対して脳血管性認知症は急激に症状が悪化します。
②時間や日によって状態が変わる
良い時はしっかり物事の判断や状況把握ができますが、悪い時には何も解らなくなったりします。そのため、脳血管性認知症の方自身も混乱しやすく、泣くほどのことでもないのに涙が出てきてしまったり、怒鳴り散らすなどの感情の不安定さを生じさせます。このような感情の起伏を感情失禁といいます。
③抑うつ状態になってしまう人もいる
脳卒中の患者はうつになりやすい傾向があります。ですので、単に気持ちだけの問題ではありません(もちろん、気持ちの問題もゼロではありません)。
④身体症状が起きる
元々が脳梗塞や脳出血などの脳の病気が原因の認知症ですので、構音障害(発音が上手くできない)、嚥下障害(上手く飲みこめない)、歩行障害、体の片方側の麻痺などの体の不自由が生じます。
⑤夜に声を荒げたりする不穏な動きや意識の障害が起こるケースが多い。
⑥脳血管性認知症の人は糖尿病、高血圧、高脂血症などの病気を持っている人が多く、認知症の症状を悪化させないためにもこれらの病気の改善が大切になります。脳血管性認知症の発症率は糖尿病を持っていると持っていない人を比べると2.77倍違います。
⑦損傷する部位によって差はありますが、記憶障害は比較的軽めの場合が多いです。また、脳血管性認知症の場合には物忘れのような記憶障害で、何かの拍子に思い出すことがあります。
脳血管性認知症で使われる薬
脳血管性認知症の薬はアルツハイマー型のような専門の薬(アリセプト)はなく、脳の血液循環や代謝を良くする薬や高血圧、高脂血症を改善するための薬を使用します。
[参考記事]
「脳血管型認知症により暴力行為が収まらない男性の事例」