認知症の人のBPSD(周辺症状)には様々なものがありますが、今回は徘徊についてお伝えしたいと思います(周辺症状については「認知症の周辺症状ってどんな症状なの?」)。「たかが徘徊」と軽く見ていると、時として交通事故に合う・転倒による大腿骨頸部骨折に伴い寝たきりになる等、認知症の人のQOLに多大な影響を与えます。
とりあえずその場は「適切に」付いて回る
では、認知症の人が徘徊し始めた時にはどうすれば良いのでしょうか。私は付いて回るようにしています。今まで勤めてきた事業所でもそうでした。ここで気を付けて頂きたい事は「付き過ぎない」という事です。
なぜ付き過ぎないのかと言うと、徘徊するという行為はストレスが掛かり不安定になっている時が多く、認知症の人が「監視されている」と捉えれば、激昂し、暴力行為や騒ぎ立てるといった行動に繋がるからです。
実際に私は介護職員に成りたての時に、適切な距離感が分からないのと相手の性格や性質の認識不足で付き過ぎてしまい、「付いてくるな」と暴力に合った事がありました。状況がここまで悪化すると怒りを収めるのは一苦労です。
この時、付かず離れずで「付かれている」という認識をさせてしまうような付き方をしていなければ状況は違うものになっていたでしょう。言ってみればこの時の暴力行為は私によって作り出されたBPSD(周辺症状)です。ちなみにこの時は付いて回る役を別の職員に変わってもらって、1時間程の徘徊をして疲れたところに車で偶然を装い迎えに行きました。
何故徘徊し始めたのか理由を探る
「徘徊し始めたから付いて回る」というのは、認知症ケアの失敗を意味しています(当然ですが散歩を日課にしている(していた)人の散歩は除きます)。何故かと言うと、徘徊はBPSDであり、中核症状ではないからです。
つまり、以前から中核症状に不安・焦燥・痛み等何らかの因子が加わっていて、「顔をしかめたり、普段と様子が違う」などの何らかのサインが出ていたはずです。それに気付かず、適切なタイミングでケアをしなかった結果が徘徊として現れます。
徘徊行為が収まった後に徘徊し始めた原因を探り、根本部分を解決するような人的・物的な環境整備をして徘徊を未然に防ぐようにしましょう。
大変なのは本人だという事を知る
家族介護者であればまだいいですが、利用料を受取っている介護職員が「徘徊するから大変」と言うのは止めましょう。介護施設に適切な環境整備がされておらず、その結果、SOSが徘徊という形で表れているので、「大変」と言いたいのは、本来は認知症の人自身です。しかもケアの対価として利用料まで払っています。
ですので「大変」という言葉は専門職が口にすべきではありません。「厄介な人が徘徊し始めたから仕方なく付いて回っている」との思いは、態度に出て徘徊を悪化させる皮肉な形で戻ってくるので控えて下さいね。
[参考記事]
「[認知症による徘徊] 行方不明を防ぐための対策」