認知症における徘徊であっても認知症を持つ本人はしっかりと目的を持って歩いています。人によっては「家に帰る」等の発言をするケースもありますが、自分の思いを上手く表現できず、黙々と周囲を徘徊しているケースもあります。
認知症の方が全て発症するものではありませんが、認知症の方と接する場合には知識として徘徊について理解しておく事は大切です。ここでは徘徊が発生した際に適切な対応が出来るよう症状例や対応方法について紹介します。
徘徊の症状例
徘徊の目的は人によって様々ですが、具体的な例をあげると
〇施設に入居している方が現在の状況を理解できず「家に帰りたい」と出口を求めて徘徊する
〇過去に行っていた趣味活動の集まりに参加するため「今日は~さん達と出かける日だから」とバッグを持ちながら徘徊する
〇自宅に住んでいながら現在自分がいる場所が理解できず子供の時に住んでいた家に帰ろうと自宅から出て徘徊する等があります。
また、認知症の影響で見当識障害という自分のいる場所が理解できない症状が発生し、徘徊に結びつくケースが多く見られます(参考記事「認知症の中核症状って一体どんな症状なの?」)。
徘徊の適切な対応方法
認知症により徘徊が発生した時、その場に遭遇した人の中にはつい「ここが貴方の家です」「何でそんな事を言うの」等、否定する発言をしてしまう事があります。しかし本人にとっては目的を達成するための行動として徘徊を行っています。否定したり、無理やり引き止めるような態度は相手に不快感や不信感をもたらしてしまいます。ですので徘徊を行っている人の行動や発言を否定せず、受容する態度を取る事が重要です。
具体的な対応方法として「家に帰りたい」「出かける」という訴えに対しては「自宅に帰りたくなったんですか?もう少し私とお話ししてくれませんか」「送っていきますから洗濯物を畳むのを手伝ってください」と受容しつつ、興味を他のものに向けていく方法を取ります。
それでも効果が見られない場合は周囲を一緒に散歩し「歩くと距離がありますから明日私が送っていきます。一度元の場所に戻りましょう」といった対応を行います。
また、現在住んでいる場所が本人にとって安心して楽しく過ごせる環境になるよう、日頃から会話や一緒に家事を行うといったコミュニケーションを深めておく、本人が好んでいた趣味活動の時間を取る等の対応も徘徊を予防できる可能性があります。