介護保険制度の改正により、2015年4月より
「要支援1、2の人は介護保険の通所介護と訪問介護が使えなくなり、市町村が運営する事業に移行する」
「特別養護老人ホームへの入所は要介護3以上」
となりました。
この他に、
「所得が一定以上(年間所得160万円以上)だと利用者の自己負担額が2割になる」
「高額介護サービス費の上限が引き上げ(つまり、負担増)」
「低所得者は保険料の軽減拡大」
などに見直されました。
これらの改正の中で一番影響が大きいのは前者の2つです。改正以前は要支援2程度(日常生活は営めるけど物忘れなどがある状態)から身体的な問題が加わり要介護度1に達することによって特別養護老人ホームに入所できましたが、2015年4月以降は困難となりました。
そういったことにより、本来であれば入所できる状態であるのに特別養護老人ホームには入所できないため、在宅介護をせざるを得なくなる家庭が増えていくことになると考えられます。もしくは有料老人ホームも選択肢のうちの一つです。
では介護施設はどれくらいの費用がかかるものなのでしょうか。
介護施設は以下の3つに分類できます。
①初期費用・月額費用ともに一定以上の自己負担が求められますが、選択肢やオプションサービスが豊富である「有料老人ホーム」や「高齢者住宅」。
どちらも初期費用が数百万円から数億円です。
②自治体の助成などで費用が比較的に抑えられる「軽費老人ホーム」や「グループホーム」。費用は比較的に抑えられますがそれでも初期費用数十万円から数百万円と高額です。また介護サービス費や生活費などで月額20万円前後かかることもあります。
③初期費用がなく、月額費が最もかからない「特別養護老人ホーム」や「老人保健福祉施設」、「介護療養型医療施設」。月額が10万円前後です。しかし2015年法改正などにより重度の要介護者を対象となってしまいました。また、「介護療養型医療施設(現在では約7万床)」は2020年廃止予定となっています。
以上、法改正や施設の廃止などを考えると在宅介護の要介護者は増えてくると考えられます。そこで次の章では「認知症高齢者を在宅介護する際の注意点」について書いていきます。
認知症高齢者を在宅介護する際の注意点
在宅介護における注意点などを考えてみようかと思います。
①認知症の特性として「一緒に何かを行うこと」というのが認知症の進行を遅らせるためには有効であるとされています。しかし、実際に在宅介護を行うことになると、仕事などで認知症高齢者に一日中寄り添っていられることは少ないかと思います。
そういった状況でどこまで認知症高齢者と「無理なく一緒に行えること」を探すかは大きな問題です。在宅介護において難しいのが「認知症本人ができることなのに介護者がやってしまう」、「できないことを認知症本人にやらせてしまう」などの日常生活動作における点です。なかなか「できること」と「できないこと」の境界線を見分けるのが難しく、介護者の時間的、精神的な問題でそれを見分ける前に「すべてやってしまう」ということは少なくありません。
認知症高齢者には「できることをやってもらう」というのは非常に重要で、認知症の進行を遅らせるためにも大切です(参考記事「[認知症介護]生きがいを見つけたことで排泄ケアが上手くいった例」)。なかなか施設に入りにくい状況である今、認知症の症状の進行を遅らせるというのが家庭内でも取り組むべきことかと考えます。
②また、それだけではなく、身体的な管理として、脱水症やむくみの防止として水分の管理と排尿、排泄の確認が非常に重要となってきます。そういったものを記帳し、いつ排泄するのかが分かるようになれば弄便などの症状を抑えることができます(参考記事「認知症の人の弄便(便を触るなど)にどう対応しているの?」)。
③そして何よりも介護者と認知症高齢者の精神的な問題というのが一番根深いです。認知症には感情失禁や錯覚、せん妄などの周辺症状がありますが、理解していても自分の家族が徐々に変化していく不安を消すのはなかなか難しいかと思います。
不安からくるイライラで「同じことを何回も言うな」と怒鳴ってしまうこともあるでしょう。そう言われた認知症の方は怒られた理由は忘れることはあっても、嫌な感情だけは残っています。そうすると症状の悪化となって介護者に返ってきますので怒鳴ってもマイナスの効果しかありません。
せん妄や錯覚、幻覚などを抑えるのは難しいですが、感情失禁や徘徊、もの盗られ妄想などは日々のコミュニケーションの積み重ねで比較的抑えていくことが可能です。私(介護福祉士)が認知症高齢者と接するときに気を付けていることは「相手の世界観を否定しない・または一緒に入り込む」という点です。
例え数十年前の思い出を現在の出来事のように語ったとしても、こちらもそれに合わせて相槌をうったり、質問をしたりとコミュニケーションを図ります。相手の感情を揺さぶらないようにコミュニケーションを図るというのが大切かと感じます。
以上のことに注意して、在宅介護を行ってください。