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排泄ケアが上手くいった認知症入所者の事例

 

 Mさん(80代・女性)は10年前に脳梗塞を発症しました。術後の経過は良好で麻痺等の後遺症は残らず、近所に住む息子様夫婦に支えられながらご主人と二人で暮らしていました。

 しかし、その後ご主人が他界され、徐々に気分の浮き沈みが激しくなるなどのうつ症状が出始め、何もやる気が出ず、次第に家に引きこもりがちになっていったそうです。そこから認知症の症状も進行していき、食事や服薬の管理、排泄障害も出てきたため、息子様が施設入所を検討されました。

 今回は主に排泄ケアの成功事例をお話ししていきます。

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排泄障害に対する対応

 グループホームに入所当初は、慣れない環境ということもあり、笑顔もなく、意欲低下や介護依存がありました。特に排泄障害が進み、尿意・便意が低下したことで日中は常時オムツを着用していました。また夜中に弄便がある事もしばしばありました。

 そこで、Mさんの今後のケアプラン内容に、
「Mさんの興味・関心を引き出し、毎日充実した生活を送って頂けるための取り組みを実施すること」

「排泄ケアを再検討し、オムツ外しに向けての取り組みを実施すること」

を組み込みました。

 まず始めに、ご家族から情報収集で得ていたMさんのこれまでの経歴や趣味、性格などをもとに、趣味である家庭菜園作りの企画を立てました。一緒に種や土から購入し、プランターに植える作業までを全てMさんに決めて頂きながらすすめていきました。始めは職員に言われるがままに、仕方なくといった感じだったMさん。プランターの前までは行かれますが「あんたに任せるわ。あんたが水やりして。」といった具合でした。

 しかし、毎朝の水やりやお世話を根気強くお誘いしていると、ある朝「今日も(水やり)するんやろ?」とご自分から庭に出ていかれました。その日から、毎朝ご自分で庭に出て行くようになり、水やりや雑草抜きをされるようになりました。雨の日も庭の方を気にされる姿が見られました。

 収穫時期には一緒に調理して他の入居者様に手料理を振舞われました。ご自分で育てたものや調理したものを「美味しい」と言ってもらい、Mさんの中で自身の喜びに繋がったのか、その日から少しずつ表情が活き活きとし、笑顔を見せてくださるようになりました。また、ご家族の面会の際に「これ私が育てよる野菜よ」と自慢げに話され、ご家族もお母様の変化に喜ばれていました。

排泄ケアに協力してくれるようになった

 このように毎日の生活に活気が出始めた事で、排泄ケアに対するMさんの意欲にも変化が見られました。まず、私たちは尿意・便意の有無に関係なく、毎朝食後にトイレに座って頂く習慣を作っていきました。トイレに座って腹部マッサージをしたり、排泄の声掛けをすることで、トイレで排泄をするという意識づけをしていったのです。

 また、Mさんの排尿間隔や回数を記録し、何もしていない時に立たれて何かを探す仕草をされたり、そわそわされている時などを見計らってトイレにお誘いしていきました。

 この取り組みを続けていくことで、段々と毎朝の排便コントロールが上手くできるようになり、夜中の弄便もなくなりました。また、排尿もトイレの誘導時間がMさんの排尿間隔にあったタイミングとなることでオムツへの失禁が減り、不快感も軽減していきました。現在では、紙パンツから失禁用の布パンツに小さいパッドを当てるだけでほとんど失禁されることはありません。

 ご自分で出来る事が自信や生きがいに繋がり、何か役割があることで毎日の生活に楽しみを持てるようになったMさん。それに連れて排泄ケアも上手くいくようになりました。今回の取り組みは私たち介護職員にとって大きな「学び」となりました。

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「認知症による弄便はなぜ起こるのか。その原因と対策」

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